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選手の心の不調問題、休養した競泳・萩野公介は世の中に願う 人にも、自分にも「優しく生きて」【世界水泳】

リオ五輪400m個人メドレーで金メダルを獲得し、ガッツポーズする萩野さん【写真:Getty Images】
リオ五輪400m個人メドレーで金メダルを獲得し、ガッツポーズする萩野さん【写真:Getty Images】

現役時代に考えた「あれ、なんのために生きているんだろう」 たどり着いた答えとは

――現役時代は「自分から水泳を取ったらどうなるか」と想像した瞬間はあったのでしょうか。



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「そこまで考えてはいなかったですね。ただ、水泳はもの凄く練習時間が長いので、寝る、食べる、泳ぐだけのような一日でした。そこで水泳を取ったら、寝るか食べるしか残っていないんですよ(笑)。だから『寝る、食べるしか残っていない自分に何の価値があんだろう』みたいな。

 みなさんも好きで情熱を傾けているものが一気になくなったら、『あれ、なんのために生きているんだろう』と思う瞬間が出てくると思います。だから、『自分は自分なんだな』と思いました。そこをなくしたら別にロボットでもいいと思います」

――「なんのために自分は生きているんだろう」と考えた結果、答えは何か見つかったのでしょうか。「生きているだけで二重丸」の部分でしょうか。

「それが現時点での答えですね。だから、過程についていろいろと考えることもあります。話が一番最初に戻ると、鈍感にならず敏感に生きていきたいと思うのも過程の一つです。だから、今までお話したものも全てひっくるめて『自分』なんです。人は変わり続けるものなので、1か月後にお話をする機会があったら違うことを言うかもしれません」

――競泳に限らず、心の不調を告白する選手がいます。そういうニュースを目にした時、元選手として感じるものはありますか。例えば、悩みを言いやすい社会になったらいいなとか。

「以前よりものを言いやすい世の中になっているのかもしれないですが、もし僕が選手だったら『言いやすい世の中になったから言おう』ということはありません(笑)。おそらくそういうふうに勝手に社会が思っているだけなのかなと思います。(自身が言い出しにくかったのは)社会のせいではなく個人の問題。僕の性格上の問題です」

――今、リアルタイムで悩んでいる選手はどうすればいいのでしょうか。

「『つらかったら休んだらいいと思う』というのが僕の答えなんです。つらいのに『頑張れ』と言っても、先に休むタイミングが来るのか、後で休むタイミングが来るのかのどちらかなので。僕は別にどっちでもいいと思います。これも突き放しているわけではありません。

 全ての物事は来るべきタイミングで来ると思っています。だから、苦しくても頑張ろうと思ったらそういうタイミングだし、苦しいから休もうと思ったらそういうタイミング。全ての物事は必然で起こっていると思います。

 僕の大好きな漫画の『バガボンド』の中で『沢庵宗彭』という先生がいます。『お前の生きる道は、これまでもこれから先も天によって完璧に決まっていて、それが故に完全に自由だ』というセリフがあるんです。

 全くもってその通りだと。どんな選択をしようと、どんなものになろうと、それはもうすでに神によって確実に決められている物事。だからこそ、あなたは自由に生きなさいというのが僕の中の考えの一つです。だから、僕は『休みたいと思ったら休んだ方がいいと思うよ』と。

 僕はよく、優しい世の中になってほしいなって思います。例えば絶対に人を殺したり、傷つけたりしてはいけませんが、人に優しく生きていたら基本的にそういうことは起きない。でも、『自分』という人に対しても優しくいてほしいと思うんです。いろいろな物事を捉えて、優しく考えてほしいなって」

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