日本に来るルーマニア競泳界の18歳革命児 期待するのは世界新と「正真正銘の寿司」【世界水泳】
「東京五輪はコロナで客席が空っぽ。でも、ボランティアの方々が…」
凄さを語る上で欠かせないのが、泳ぎの技術。他のスイマーが水を掻くと、手が水の中に入った時に泡が出る。しかし、ポポビッチの手から出る泡は少ない。“全く泡をつかまない”柔らかなキャッチがタイム短縮に繋がっている。この礎を築いたのは9歳からコーチを務めるラドゥレスク氏だったという。
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「もともと僕は正統派の泳ぎ方をしていなかったんだ。ある時、父がコーチに『どうしてダビドはこんな泳ぎ方をしているんだ』と問い詰めた。すると、コーチは2008年北京五輪の男子200メートル自由形で金メダルを獲得したフェルプスの映像を見せた。最初は名前を伏せて『どの選手が勝つと思う?』って。そこでコーチはフェルプスを指し『ダビドと同じ泳ぎ方だ』と。そこで父は納得したんだ。今の技術は僕にとっては自然な泳ぎ方で、コーチが完璧にしただけだ」
体型は他の選手に比べてスリム。筋力の差はスプリントに影響するとも言われるが、「それは関係ない」と一蹴する。「僕が速く泳げるようになる方法を定義するなら、できるだけ少ない努力で、いかに効率よく水の中を動けるか、だ。筋肉がありすぎると沈んでしまう。僕は長距離もたくさん練習しているし、独特のスプリントセットも。効率を良くする練習をしているんだ」と強調した。
誰もが目指す世界の頂点についても固執していない。
「水泳において、僕を最も助けてくれていることは『受容』なんだ。どのような結果になっても、全力を尽くしたのならいい。僕は大会に出る時は自分がどれだけ勝ちたいか、あるいはどれだけ1位になりたいかを一度も考えたことがない。自分がベストを尽くすことにだけ集中しようと努力すれば、勝利はボーナスみたいなものだと思う」
来日は2年ぶり。日本に対していいイメージがある。「東京五輪はコロナのせいでスタンドが空っぽだった。でも、スタッフやボランティアの方々がいい雰囲気をつくってくれた。だから、福岡では五輪で味わえなかったものを感じることができるだろうし、とても興奮すると思う」と高揚感を隠せない。「僕はマグロのトロの寿司が好きなんだ。ルーマニアで寿司を食べようと思っても、やはり満足はできない。でも、福岡では正真正銘の寿司を食べられる」と日本食も楽しみにしている。
内容に納得しない練習には取り組まないタイプ。昔から体のメカニズムに関する哲学書などを読んでいた。読書や海外の話をするのが好きで、学校では「リトル・グーグル」と呼ばれるほど博識。将来を見据え、早くから英語も学んでいた。
「僕の場合、水泳だけに執着すると、ある時点で脆くなってしまう。だから、それに熱中しすぎずに、人生を謳歌しなくてはいけない。僕はスイマーであるだけではない。たまたま泳ぐのが上手いだけだ」
安定した精神力と天性の技術が今以上にマッチした時、福岡の地でさらなる衝撃を世界に与えるかもしれない。
(同じく16日の第27回は新怪物レオン・マルシャンが登場)
◆世界水泳 7月14日にアーティスティックスイミング(AS)、飛込から開幕。水球、オープンウォーター、ハイダイビングも行われる。同23日に開幕する競泳は、決勝をテレビ朝日系地上波にて最終日まで8夜連続生放送。ASはBS朝日、飛込はCSテレ朝チャンネルで生放送。
(THE ANSWER編集部)