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【世界水泳】無名の17歳に夢を見せた日本開催 22年前の客席にいた松田丈志に残る世界記録の熱気

松田さんが考える今年の福岡大会の意義【写真:徳原隆元】
松田さんが考える今年の福岡大会の意義【写真:徳原隆元】

福岡大会は世界中の選手が「ギアを上げてくるタイミング」

 刺激に包まれた大会を糧とした松田さんは、やがて日本代表として世界大会で活躍するようになっていった。



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「自分もあそこに行きたい」と誓った世界水泳は、その大会ごとに糧となった。例えば200メートルバタフライで銀メダルを獲得した2005年のカナダ・モントリオール大会。21歳の当時をこう振り返る。

「2004年のアテネ五輪に出ましたが、自分のパフォーマンスが全然出せなかった大会なんですね。『俺は世界大会で力を出せないタイプなのかな』みたいな気持ちになるわけです。それを払拭するには、やっぱり結果を出すしかない。翌年の世界水泳でメダルを獲ることができて、『自分はまだやれる。まだいけるんだ』という気持ちになりましたね。世界でも戦える選手だと自分を信じられる、そういう大会になったと思います」

 2011年、中国・上海での世界水泳でも200メートルバタフライで銀メダル。それは2012年のロンドン五輪を1年後に控え、手応えをつかむ舞台となった。

 そして今回の福岡大会も、1年後にパリ五輪を控えるタイミングでの開催となる。新型コロナウイルスの影響により2度延期となって今夏の開催となったが、昨年はハンガリー・ブダペスト、来年2月にはカタール・ドーハで世界水泳は行われる。本来の「2年に一度」の開催とは異なる変則スケジュールとなる。

 それでも、福岡大会の意義は変わらないと言う。

「選手は夏に仕上げますが、オリンピックの前の夏と言えば、(今回の)福岡が最後であるわけです。世界の選手みんなが、ギアを上げてくるタイミングです。本来のスケジュールと変わらず、オリンピックの1年前の夏という重要な大会です。世界の選手がオリンピックに向けて最後の腕試しをするタイミングなので、非常にレベルの高いレースが多く見られるんじゃないかなと思いますね。本来は東京オリンピックの翌年の夏に行われる予定だったわけですけれども、そういう意味では結果的に開催がずれて、良かったかもしれないなと思います」

 今大会では、解説者として携わる。

「選手たちのパフォーマンスと、観てくれている人をつなぐ重要な立場にあると思います。今、目の前で起こっている世界最高峰の戦いをより噛み砕いて、それがどれくらい難しいことなのか、どれくらい凄いものなのか、選手の気持ちにどういう揺れ動きがあるのか、そういうところを観ている人たちにできるだけ具体的に分かりやすく、自分の経験を踏まえて伝えることを心がけたいと思っています。

 今まで水泳を見てくれた人たちは当然ですが、見ていなかった人たちに対して、世界水泳をきっかけに見てもらえるようにしたいです。世界の水泳で今、こういうことが起きているんだという入り口をつくれたらと思っているので、しっかり役割をやりきりたいですね」

(第19回は松田丈志さん後編「国内外の注目選手と日本代表に期待する姿」を配信)

◆世界水泳 7月14日にアーティスティックスイミング(AS)、飛込から開幕。水球、オープンウォーター、ハイダイビングも行われる。同23日に開幕する競泳は、決勝をテレビ朝日系地上波にて最終日まで8夜連続生放送。ASはBS朝日、飛込はCSテレ朝チャンネルで生放送。

【プロフィール】
松田 丈志
競泳五輪メダリスト

1984年6月23日生まれ。宮崎県出身。4歳から地元の東海スイミングクラブで水泳を始め、久世由美子コーチの指導により頭角を現すと高校3年で初の日本代表入りを果たした。五輪には04年アテネ大会から4大会連続出場。最も得意とした200メートルバタフライで08年北京、12年ロンドンと2大会連続の銅メダル。ロンドン五輪の400メートルメドレーリレーでは日本男子史上初の銀メダルを獲得した。32歳で出場した16年リオデジャネイロ五輪では、800メートルフリーリレーで52年ぶりの銅メダルを獲得。同年に引退後はスポーツジャーナリストなど多方面で活躍している。

(松原 孝臣 / Takaomi Matsubara)

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松田 丈志

競泳五輪メダリスト 
1984年6月23日生まれ。宮崎県出身。4歳から地元の東海スイミングクラブで水泳を始め、久世由美子コーチの指導により頭角を現すと高校3年で初の日本代表入りを果たした。五輪には04年アテネ大会から4大会連続出場。最も得意とした200メートルバタフライで08年北京、12年ロンドンと2大会連続の銅メダル。ロンドン五輪の400メートルメドレーリレーでは日本男子史上初の銀メダルを獲得した。32歳で出場した16年リオデジャネイロ五輪では、800メートルフリーリレーで52年ぶりの銅メダルを獲得。同年に引退後はスポーツジャーナリストなど多方面で活躍している。

松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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