卵巣にできた腫瘍破裂、競技人生をかけた手術 現役選手たちへ「生理痛、仕方ないと諦めないで」――元陸上オリンピック選手・室伏由佳さん
生理の悩みに「仕方ないなんてこと、ないんだよ」
―――陸上競技を始めてからずっと婦人科系の病気と付き合う人生を送ってきました。数々の経験をもとに子どもたちや学生、そして現役の選手たちに伝えたいことは何でしょう?
「まず、自分の体をケアできるのは自分でしかない、と知ってほしいです。今の人は、気になる症状があったとき、多くの方がまずは似たような経験談をネットで検索したり、友達に話を聞いたりするように思います。そこで、自分と似た症状でも『何ともなかった』と聞くと『あ、大丈夫かな』とつい思ってしまいます。でも、『あの人が大丈夫だったら、自分も大丈夫』とは限らないのが人の体です。ですから、例えば生理痛か強い気がするなど、どんなに小さなことでもいいので、気になることがあったら1回、病院に行って、ドクターとお話をしてほしいと思います」
――でも、中学・高校生ぐらいだと実際は病院に行くことは、とてもハードルが高い。しかも、ちょっとぐらいの痛みなら「ガマンしちゃおう」と、つい思ってしまいます。
「確かにクリニックに行くことに、躊躇するかもしれませんが、つらい症状に対処する方法がわかれば、競技をもっと楽しくできます。学生と話していると、せっかく試合のために厳しいトレーニングを積んできたのに、生理前だから、生理中だから『痛くても仕方がない』『力が発揮できなくても仕方がない』と言うんです。でも、『仕方ないなんてこと、ないんだよ』と伝えたい。ひたすら痛みをガマンしたり、どうして私だけ生理に振り回されるの!? とか、何でこの苦しみをわかってもらえないの? と思い悩んだりする必要なんて、本当はないんです」
――ガマンをしないって大切なんですね。
「ガマンのレベルは自分では測れません。女性アスリートはガマン強い人が多いのですが、例えば、PMSは一般の人よりもアスリートの方が強く出る、とわかっています。だから、実はすごいガマンをしているんです。しかも、PMSや生理痛があると月の3分の1ぐらいはいつもすごく不調です。だから『いつもこうだから仕方がない』と思い込み、初めから諦めて、本当は可能な改善方法を考えないまま過ごしてしまう。
私自身を振り返っても、自分の体のことを考えるって、すごく面倒に感じていました。誰に言っても『大変だね』で終わってしまうし、理解してもらえない。貧血が強かったときは特に、もう改善しないと諦めていましたから」