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引退後、街の人の「凄く太ったね」に傷つき 悪意なき体型いじり、私は「ぱんぱんの太ももを愛したい」――フィギュア・村上佳菜子「女性アスリートと体重管理」

「自分を好きになる」を目標にしているという村上さん【写真:荒川祐史】
「自分を好きになる」を目標にしているという村上さん【写真:荒川祐史】

インスタグラムに記した「どんなに頑張ってもぱんぱんの太ももを愛したい」の真意

 こうして減量に取り組む中で、自分の体と向き合う時間が自然と増えた。

 昨年10月に自身の体型について投稿し、反響を呼んだインスタグラムも、それがきっかけだった。食事をしている時の母の監視する視線が嫌で、他人にジッと見られるのが苦手になったこと。引退して13キロ太った体型を指摘されて傷つき、自信を失ったこと。「美しくて綺麗で可愛い」が植え付けられた日本で、太くて短い脚にコンプレックスを持っていること。それでも、そんな自分の体を愛そうともがいていること。赤裸々に自分の体型に想いをつづった上で、村上さんはこう締めくくっている。

「私もどんなに頑張ってもぱんぱんの太ももを愛したいと思います 見て! 私の太ももを!ってね!!!」

 今も悩み、考えながら自分を、体を変えようとしている村上さん。伝えたかったのは、どんな自分でも好きになることの大切さ。

 ダイエットをしても、太ももだけは痩せなかった。「それなら、だらしない太ももより、良い太ももでいよう」と考えを変えた。「太さは変わらなくても綺麗な体でいたいと意識し始めたら、体が変わってきた。メンタルと体は通じているんだと感じます」

 自分を好きになることは「私もまだレベル1くらい」と笑うが、毎年、年末に10個書く翌年の目標のひとつに必ず「自分を好きになる」を入れて、少しずつ「好き」の気持ちを育てようと努力している。友人に最近、言われた言葉にハッとしたという。

 それは「何個も書くより、『自分を好きになる』だけに絞ったら?」というもの。

「結局、自分のことを愛せれば、どんなことをやっても納得いくし、受け入れられるから、と。すごく響きました。あれもこれも……と思うと大変だけど、それだけに特化してやればいい。簡単だけど、私には気づけなかったこと。そのおかげもあって、少しずつ物事も楽しくポジティブに受け入れられるようになってきました」

 そして、ルッキズムが課題とされる世の中に思うことがある。「『太ったね、良かったね』と言う人は普通いないけど、『痩せたね、良かったね』と言う人はすごくいる。『痩せたね』をポジティブに思っている世の中は、私はあまり良くないと思うんです」と疑問を投げかける。

「もちろん、健康上で理由がある方を除けば、痩せたら綺麗になるというのは必ず比例するわけでもない気がするんです。特に日本は細いモデルさんが多いし、体重(の数字)を大切にしすぎる風潮が強い。でも、自分らしく(体を)極めることを褒めてあげてもいいと思う。海外のセレブの方たちを見ても、本人が『美』と思えば、周りも『美』と思う。すぐには難しいけど、日本も人の見た目にポジティブな見方ができるとうれしいなと思います」

「痩せている」と「太っている」の二元論じゃない、自分らしい体形。言うなれば、“他人ウケ”より“自分ウケ”をもっと尊重する価値観が広まるべきなのかもしれない。村上さんも元アスリートらしく「筋肉が好き」と、なりたい自分の体にこだわりを持つ。

「ハムストリング(太もも裏)がボコッと出ている感じが好きで、脚が綺麗に見えるから、私も頑張って育ててます。ふくらはぎの筋肉が嫌な人も多いけど、私は美しいと思う。それでパンプスを履いたら、かっこいい。綺麗な体の定義は人それぞれでいいんです」

 さらに、自分を育ててくれたフィギュア界に変化の息吹も感じている。

「今の若い子たちはポジティブに受け止めている感じ。『いやあ、食べすぎちゃった』みたいな話も明るくする。良い体でいよう、自分の体を愛そうという世界的な流れか、私たちみたいに『サラダしか食べちゃいけない』『ああ、これ食べちゃった』と思う子は少ないし、栄養士さんがつくことも珍しくない。昔は栄養士もトップ選手しかダメというイメージがあったけど、世界の大会に出る前から学べる環境ができていることも大きいです」

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