かつては人前で話すことがタブー 生理の風潮を変えた発信から7年、向き合い続ける月経問題の「今」――競泳・伊藤華英「女性アスリートとニューノーマル」
大切なことは「どれだけしんどいかの発信より対処法の浸透」
しかし、未来に目を向けると、冒頭で伊藤さんが述べた通り、認知は理解されても十分な理解に達していないことも事実だ。
「私自身は月経困難症で子宮腺筋症の診断があったこともあり、対策をしていて今、経血が流れるという意味では月経が来ていないんです。だから、今は人のために頑張れている感じはしますね。自分が悩んでいたら、自分の生理でいっぱいいっぱいですが、今はかなり楽なので、こういうこともあるよと言いやすい。ピルを飲んでいるわけではなく、黄体ホルモンを子宮内に装着しているので、PMS(月経前症候群)の症状は多少あるものの、つらさは減ったと思います。夫からは『本当に良かったね。感情の起伏が10分の1くらいになった』とも言われ(笑)、理解してくれています。
だから、世の中的にどれだけしんどいかを発信するより、対処できるよということが浸透してほしいと思いますね。生理は自然に来るもので、定期的に来るかどうかが健康のバロメーターと思っている方も結構います。でも、お医者さんに聞くとそういうわけじゃない。月経が来ることで起こる病気、来ないことで起こる病気もあるので、生理についての認知は進んでも、生理そのものの理解で言うと、まだまだ足りない。自分自身の生理のことも理解している人は少ないんじゃないかと感じます」
解決に向かっていくために深刻な課題もあるという。それが「地域格差」だ。
(後編へ続く)
■伊藤 華英 / Hanae Ito
1985年1月18日生まれ。埼玉県出身。東京成徳大高―日大―セントラルスポーツ。背泳ぎで2008年北京オリンピック100メートル8位、2010年に自由形に転向し、2012年ロンドンオリンピック出場。同年秋に引退した。引退後は早大大学院スポーツ科学研究科に進学、順大スポーツ健康科学部で博士号取得。2017年に東京五輪組織委戦略広報課の担当係長に就任し、大会の成功に尽力。2021年から教育プログラム・スポーツを止めるな「1252プロジェクト」を立ち上げ、リーダーとして活動を推進している。「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」では3日に行われるオンラインイベントにも出演する。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)