女子選手に求められる月経管理「本当の良い練習は生理後1週~10日だけ」―三宅宏実の意見
「女性が本当にいい練習できる期間って、生理後の1週間~10日間しかない」
減量種目なので、体脂肪率の変動は特に気を付けている。一番の心配事は、やはり無月経によるケガだ。三宅さんも04年アテネ五輪に臨む際に5キロ減量し、体脂肪も9%まで落ちた。幸いにも月経が止まることはなかったが、ケガが増えた、という。
「当時、体重を増やさないよう食事もかなり厳しく制限していました。その結果、下半身の骨をケガしたり、筋肉の炎症を起こしたりとケガが増え、栄養も十分に摂っていなかったので治りも遅かった。
この競技は重い重量を挙げ続けるので、やっぱり疲労骨折をする選手がすごく多い。現に56%の選手が骨やそれに関与するケガをしています。
女性選手は体脂肪が減りすぎると月経が止まる原因にもなり、月経が止まれば、疲労骨折の原因になります。だから脂肪が減りすぎないよう、注意しています」
チームの選手には毎朝の体温と月経の日は記録してもらうようにしている。今後、月経サイクルを生かした、強化策につなげたいと考える。
「女性が本当にいい練習できる期間って、生理後の1週間~10日間しかないんですよね。限られた時間を大切にしないと、競技力の向上も難しくなるのでは、と思います。
一方、調子の悪い時期に練習量を落とそう、と言いすぎても、強化につながらない恐れがあります。競技者には、追い込まないといけない時期もありますし、どこまでできるかできないかを見極めながら、指導していきたいですね」
指導者として最も大切にしたいのは、選手とのコミュニケーション、そして選手自身に自覚をもって体のことを考えてもらうことだという。
「PMS(月経前症候群)が出る頃だよね、気を付けないとね、などと選手に言い続けることで、彼女たちも体調や生理と向き合う時間が増えるのではないかなと思います。
私自身の経験は、女子ウエイトリフティングの選手は、どこにピークを合わせるとよいのかの指針にはなったかなと思っているんですね。体力のある25~27歳に練習して、体の貯金をしながら選手人生のピークに持っていく。選手には与えられた時間を大切に、競技に取り組んでほしい」