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男女で分かれる更衣室にどう対応? スポーツとLGBTQ、競技団体によっては未だ「感度が鈍い」

競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、2021年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第5回のゲストは日本パラリンピック委員会の河合純一委員長。競泳選手としてパラリンピック6大会で金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した同氏と全3回で議論する。今回は後編。(取材・構成=長島 恭子)

競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子さんと日本パラ委員会・河合純一委員長【写真:中戸川知世】
競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子さんと日本パラ委員会・河合純一委員長【写真:中戸川知世】

連載第5回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×日本パラ委員会・河合純一」後編

 競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、2021年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第5回のゲストは日本パラリンピック委員会の河合純一委員長。競泳選手としてパラリンピック6大会で金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した同氏と全3回で議論する。今回は後編。(取材・構成=長島 恭子)

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井本「最後は、スポーツ界のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)について伺っていきます。東京オリンピック・パラリンピックで、パラスポーツは大きく躍進しましたよね。河合さんは、健常者のスポーツ団体との合同の会議にも出席されていますが、パラ競技の存在感や発言力が増した実感はあるのでしょうか?」

河合「以前はJPC(日本パラリンピック委員会)にはアスリート委員会がなく、パラリンピアンはJOC(日本オリンピック委員会)のアスリート委員会にオブザーバーとして、2、3人が参加させてもらっていました。それが、東京2020が決まると、組織委員会のアスリート委員会のパラリンピアンが一気に6、7人に増えました。ちょうど、3、4割を占めていたと思います。個人的には、とても活性化した印象があります」

井本「しかも、オブザーバーではなく、ちゃんと委員会のメンバーとして入った。それはすごい変化です」

河合「そうです。これを受けて、JPCにも2016年にアスリート委員会が誕生しましたから、変化を起こせたと思います」

井本「地道な取り組みを続け、多くの競技団体の考え方を変えた結果ですね」

河合「そうですね。やはり、突然の革命は起こりません。大きな組織が変わるには10年程度の時間はかかると思っています。ただ、変化に勢いがつく瞬間はあります。ですから、我々は向かうべき方向性を間違えないようにしながら、着実に変わっていけるよう、粘り強く課題に取り組むしかない。そう思えるようになったのは最近ですが、僕も年をとったんでしょうね(笑)」

井本「パラスポーツ界のジェンダー格差を中心に伺ってきましたが、LGBTQに対する問題意識はいかがでしょう? 人権問題に対する高い意識の土壌があるパラスポーツ界においては、性の多様性を当たり前に受け入れることも、難しくはないように見えますが」

河合「JPCの会議でも、もちろん、話題に上がったこともあります。ただし、スポーツ競技会としてどうするべきかという話でいうと、JPCとしての声明は出せていないのが現状です。現時点では、例えば、MTF(法律上の性別は男性、性自認は女性)の方の性転換治療後の運動パフォーマンスの変化についてのエビデンスも十分とは言えません。そのため、慎重にならざるを得ない。現状はどの競技団体も国際競技団体とともに決めた基準に基づき、運用される方向ではないかと思います。ただ、国内大会や日常的なスポーツ環境下でどのように対応するかは、ケースバイケースでできうる対応をすればよいと僕は思います」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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