[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

五輪2連覇→第1子出産→7か月で日本一 練習よりキツかった出産「お母さんは本当にすごい」――レスリング・金城梨紗子

東京五輪で連覇を達成した金城【写真:Getty Images】
東京五輪で連覇を達成した金城【写真:Getty Images】

出産予定日から復帰第1戦を算段「5か月で間に合わせるしかない!」

 競技引退か、続行か。揺れる気持ちをたびたび、希龍さんに伝えた。「金メダルを2つも獲ったし、もういいんじゃない?」。はじめのうちは、もろ手を挙げて賛成、というわけではなかった。

「夫とはリオ五輪後からお付き合いを始め、東京五輪前の苦しいときを一緒に頑張ってきました。だから、私のことをすごくわかっている。子どもが産まれたら、それこそ100%、練習に費やすことはできなくなる。そのことが重荷になり、しんどくなるんじゃないか、と言われました」

 踏ん切りをつけたのは、元レスリング選手だった母・初江さんの言葉だった。

「母自身、なかば勢いで引退を決めたんですね。以前、『競技を続けていたらどうなっていたかなと思ったことがある』と、言っていたことも覚えていて。母に相談すると、『続けていればよかったと、後悔したときはもう遅い。選手としてやりたい気持ちが少しでもあるならば、続けたほうがいい』と言われ、その気になりました」

 腹は決まった。現役続行を決断した金城は、すぐさま復帰までの計画を練る。まずは2022年の大会スケジュールをチェック。出産予定日から算段し、その年の10月を、復帰第1戦と決めた。

「国内では、12月の全日本が一番大きな大会。さすがに、自分がどこまで戻っているかわからないまま、そこに出るのは嫌だなと思って。残るは10月の女子オープン。だからもう、5か月で間に合わせるしかない! って感じでした」

 試合に出るからには勝ちたい。それに、出産後に全日本を制した人は、今までにいないのではないか――。金城は、復帰後の目標を、全日本チャンピオンに定めた。

 その後、国立スポーツ科学センター(JISS)にコンタクトを取った。JISSの事業である女性アスリート支援プログラムの一つに、妊娠期・産後期トータルサポートがある。そのサポートチームに、現役続行の意思を伝え、協力を求めるためだった。

 このアクションにつながったのは、同郷として以前から交流のあった、元柔道女子日本代表でありロンドン、リオ五輪のメダリスト、松本薫さんからの助言だ。

「出産後、東京五輪を目指して競技を続けていた松本さんに連絡すると、JISSにサポートシステムがあるよと、繋いでくれました。私は福井県在住なので遠隔ではありましたが、復帰に向けて体作りのサポートを、出産前から受けることができました。

 それから、松本さんはもちろん、寺田明日香さん(陸上)や、馬淵優佳さん(飛込)、引退された荒木絵里香さん(バレーボール)……と、競技は異なれど、同じような立場で頑張っているアスリートの存在は、すごく心強い。やっぱり、頑張った人が前にいるから、自分にもできるのかなと、思えるから」

1 2 3

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集