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「結婚も出産もしたいけど…」 パリ五輪参加の日本人女性レフェリー、笛を吹く裏にあった人生の選択

かつて日本舞踊をやっていた桑井さん。判定のジェスチャーにこだわりを持っている【写真:近藤俊哉】
かつて日本舞踊をやっていた桑井さん。判定のジェスチャーにこだわりを持っている【写真:近藤俊哉】

審判が追求する自分の色「見せ方が大事という話に共感します」

――スピードと体力の話が出ましたが、ピッチで走り回るホッケーやラグビーと、コート外の定位置に立つバレーボールでは、少し事情が異なるかもしれませんがいかがでしょうか?

明井「今、話を聞きながら、私も駆け出しの頃に性別や体のサイズの違いはあるけれど、とにかくシグナル1つひとつを大きく見せるようにしなさい、笛は常に強く吹きなさい、と本当に基本的なことを言われたなと思い出しました。バレーボールも一時期、女性の大会は女性が吹く時代もありましたが、最近では女性が男性の試合を吹くことも少しずつですが増えてきましたね。

 バレーの場合、限られたスペースでコートを見なくてはいけないので、見方を工夫することが必要です。また、バレーは『リズムのスポーツ』と言われているんですね。山田さんが個性の話をされましたが、例えばサービスの許可を出す笛のタイミングとか、起きた反則に対し、笛を吹き、反則を示すシグナルを出すタイミングだとか、シグナルを示す長さだとか、タイミングに審判の個性が表れるかなと思いました。

 友人などはテレビ中継で試合を観ると『立ち姿で私だと分かる』と言います(笑)」

桑井「余談ですが私、最初の頃、どうやってジェスチャーをやったらいいのか分からず、とりあえず他の方を参考にしてやっていたんです。ところが、ある時コーチに『ジェスチャーがダサい』『素人感がすごい』って言われたんですよ……」

山田「うん、いや、でも桑井さんの気持ちもコーチの気持ちも、すごく分かります(笑)」

桑井「そこで『誰かの真似をしているのに、ダサいってどういうことだろう?』と考え、『あ、自分がかっこいいと思うジェスチャーを見つければいいんだ』と気づいたんです。

 昔、日本舞踊をやっていた身としては、『ダサい』と言われると、指先までキレイにやってやろう、という気持ちになる(笑)。どうやったらかっこよく見えるかとか、他の人と違う感じでやってみようとか鏡の前で練習して、今の『堂々としている』と言われるジェスチャーにたどり着きました」

山田「素敵です。自分の色って大事だと、審判をやっていてすごく思いますから。それと、お2人から出た『大きく』『堂々と』というワード。私は身長が155センチしかなく、やはりヨーロッパの強豪国……例えばオランダの選手と並ぶと小ささが際立つんですね。

明井「分かります、分かります。自分がすごく小さいことを実感しますよね」

山田「ホッケーの審判員は身長の高さで選出されるわけではありませんが、だからこそ見せ方が大事、というお話に共感します。身長ではないところで審判としての存在感をしっかり出せるのか。シグナル1つとっても、どのように出したら説得力を持ち、選手とコミュニケーションを取れるのかは、すごく大事なところですよね」

桑井「今回の五輪でラグビーのレフェリーを務めた女性審判員は、ほとんどが身長170センチ超えなんです。ラグビーは体格の大きい選手ばかりですし、試合をコントロールする上ではグラウンドで消えてしまわないよう、やっぱり大きくダイナミックに笛を吹かないと、と考えます」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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