東京五輪女子バスケ主将のあまり知らない顔 髙田真希が30歳で“選手兼社長”になった理由
「自分のやりたいことは積極的に持っていていい」
もともと人見知りで前に出るタイプではなく、自分が起業するとは夢にも思わなかった。デンソーに入社した当時は、セカンドキャリアについても「将来はどうなるんだろう? 指導者になるのかな?」くらい漠然としたイメージしかなかった。周囲を見回してみても、現役選手と同時に他のことに取り組む“二刀流”は見当たらない。結婚、妊娠、出産を機に引退する選手は多く、「そういうものなのか」と思い込んでいた節もあったという。
2009年に20歳で日本代表に初選出されると、巧みな駆け引きから放つミドルシュートを武器に定着。世界各地で開催される国際大会に出場したり、五輪に出場したり、「他の人ができないような経験をたくさんさせてもらったおかげで、もっともっとバスケットボールが好きになり、魅力を発信していきたいと思うようになりました」。経験を積み重ねるうちに、自分は何をしたいのか、将来どういう人になっていたいのか、具体的にイメージできるようになり、いつしか「そういうものなのか」という思い込みは消えていた。
「アスリートに限らずみんな、自分のやりたいことは積極的に持っていていいと思うし、実現に向けて動いていい。周りの環境だけではなく、自分自身が持つ固定概念で『できない』と決めつけたり、諦めたりしてしまうことは多いんじゃないかと思います。どんなことでも何かやりたいことがあったら心に秘めたままにせず、周りの人に相談したりアクションを起こしたりすれば、実現する道は見えてくるはず。私もデンソーに相談して初めて、実現できましたから。」
社会の変化も感じている。日本代表で長らくチームメートだった大﨑佑圭さんは2017-2018シーズンを最後に、出産のため一時コートを離れたが、東京オリンピックを目指して2020年1月に所属チームがないまま日本代表で電撃復帰。本大会出場こそ叶わなかったが、日本代表としてオリンピック予選を戦った。
「今までにはないチャレンジだったと思います。結婚後も現役を続けるWリーグの選手は増えていますし、思う以上に社会の理解は広がっていると感じますね。もちろん、結婚や出産を人生の区切りとしたい人は、そこから次のステップに進めばいい。セカンドキャリアも含め、自分らしくある選択肢は増えていると思うので、まずは固定観念を外してみるといいかもしれませんね」