敢えてルーティンを決めずに戦う理由 陸上やり投げ・佐藤友佳、30歳を過ぎて迎えた充実期の源泉
今はゲーム感覚で向き合う競技「“自分育成ゲーム”ではないですけど…」
競技のうえでも「HAVE TO」より「WANT TO」にシフトしている。彼女を突き動かしているのが「楽しみたい」という気持ちだ。
「楽しいと思うことはとても大切です。練習も楽しんでナンボのところはあります。これは仕事でも何でもそうだと思うのですが、楽しんでいるときが一番成長につながると感じます。“自分育成ゲーム”ではないですけど、ゲーム感覚で競技に向き合っていくことも楽しめる要素になっています。
振り返ってみると(2020年に)日本選手権を優勝したときも楽しんでいました。楽しんでいるときは、自然といい記録も出ます。ああじゃないか、こうじゃないかと考えすぎてしまうと、楽しめなくなって望むような成績もなかなか出せない」
YouTubeで自分のチャンネル「ゆかchannel!」を立ち上げ、トレーニングの様子や合宿の様子をアップしている。ハードなトレーニング内容や海外合宿の様子を伝えており、佐藤の意欲的な姿勢がのぞく。これも「楽しみたい」とする一環なのかもしれない。
「最近は全然、更新できていないんです。練習しながら動画を撮るのって難しいので」
これも“アップしなきゃならない”と義務感にはなっていない。ちょっと緩いくらいが今の佐藤にはちょうどいいのかもしれない。
佐藤はやり投げのみならず、砲丸投げ、円盤投げ、走り幅跳びなどいろいろな種目をこなしてきたアスリートとしても知られている。キャリアを積んでいくなかで残ったのが、やり投げだった。
「やり投げが最も世界に近いので。(砲丸、円盤と比べて)一番、距離が飛ぶし、迫力もある。何よりやっていて楽しいし、遠くに飛ばしたいっていう気持ちが強いんです」
成長の源流にある「WANT TO」の精神。その境地に至った彼女が、何よりこれからの自分を楽しみにしている。
■佐藤 友佳 / Yuka Sato
1992年7月21日生まれ、広島県出身。中学時代に陸上を始める。東大阪大敬愛高(大阪)時代、7種競技から投てき3種目に切り替え、次第にやり投げ競技に絞る。高校時代、2009年にイタリアで行われた世界ユース選手権に出場。2011年アジア選手権で銅メダルを獲得する。東大阪大卒業後、小学校の職員として働きながら競技を続けていたが、2018年にニコニコのりに所属。現在に至る。2019年、世界選手権に出場。2020年の日本選手権で自身初の優勝を飾る。やり投げ自己ベストは62.88メートル(2019年日本選手権)。
(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)