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「月経の話」はタブーの日本 五輪選手と産婦人科医が「女性と思春期」の今を考える

伊藤さんは小中学生の親から相談を受けることも多い【写真:編集部】
伊藤さんは小中学生の親から相談を受けることも多い【写真:編集部】

親に「あんなところに行くな」と言われる産婦人科の現実

江夏「伊藤さんのキャラもありますね」

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伊藤「確かにそうかも(笑)。オープンマインドな方なので、調子が悪いことも言ってしまいたいと思っていました」

江夏「逆に調子が悪いことを絶対、言わない選手もいますよね」

伊藤「いますね。弱みを隠したい、見せたくない選手もいる。逆に調子いい時は言わなかったり(笑)。でも、月経周期はコーチに管理されていました。いつも定期的に来るものと男の先生は思っています。体調の変化でずれたりするのに、そういうことを分かってない先生もいっぱいいます。『来ないな』とか『早いな』とか言われても、体調によるんだよと思いながら聞いていました。逆に生理が遅れていること、早く来ることがストレスになったのも記憶にあります」

――江夏先生はスポーツ選手を診始めて、どんなことに驚きを覚えたのでしょうか。

江夏「驚くというか、一般女性が月経のことをよく知らないからスポーツ選手も知らないよね、ということが第一にありました」

伊藤「私は若い子たちが自分の体を大事にしていないと感じることもあります。(非常勤講師を務める大学の体育の授業で)いろんな学生を見ているけど、そういう時にすごく感じて、女の子の体は大事にしなきゃダメだよとしっかりと言っています。男の子にも言うけど、女の子に自分自身で自覚してもらいたい」

江夏「それを守ってあげられるのが産婦人科医のはずなのですが、親に『あんなところに行くな』と言われてしまう世の中なのが現実。産婦人科に行くことがやましい、みたいになってしまっています」

伊藤「25歳になって1回も産婦人科に行ったことがない人もいたりする。そういう人は絶対に行った方がいいと思います。20歳を過ぎたら行った方がいいし、25歳を過ぎたら絶対、ですね」

江夏「すごく乖離がありますね、我々の意識と一般の人の意識が。それをなんとかしたいと思って学校に性教育に行ったりするけど、『何も知らなかった』みたいにびっくりされる。親も知らないじゃないですか。『生理痛がきついから病院に行きたい』と言うと、親が止めてしまうこともあります」

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伊藤 華英

 日本代表選手として2012年ロンドン五輪まで日本競泳会に貢献。2004年アテネ五輪出場確実と騒がれたが、選考会で実力を発揮できず、出場を逃す。水泳が心底好きという気持ちと、五輪にどうしても行きたいという強い気持ちで、2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初めて五輪代表選手となる。

 その後、メダル獲得を目標にロンドン五輪を目指すが、怪我により2009年に背泳ぎから自由形に転向。自由形の日本代表選手として、世界選手権・アジア大会での数々のメダル獲得を経て、2012年ロンドン五輪・自由形の代表選手となる。2012年10月の岐阜国体を最後に現役引退。

 引退後、ピラティスの資格取得とともに、水泳とピラティスの素晴らしさを多くの人に伝えたいと活動中。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。

江夏 亜希子

1970年、宮崎・都城市生まれ。96年に鳥取大学卒業後、鳥取大学産婦人科に入局。鳥取大学医学部附属病院、公立八鹿病院(兵庫県)、国立米子病院(現・米子医療センター)などの勤務を経て、04年に上京。汐留第2セントラルクリニック、イーク丸の内、ウィミンズウェルネス銀座クリニックにて女性外来での診療を経験する傍ら、東京大学大学院身体教育学研究科にてスポーツ医学を学び、10年4月に東京都中央区に四季レディースクリニックを開院。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクターなど。日本エンドメトリオーシス学会、日本性感染症学会、日本臨床スポーツ医学会にも所属する。

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