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フィギュアの表現力に恋愛は必要か 高橋大輔の恩師が語る、スケーターの才能の伸ばし方

まず見るのは「体の使い方やスケーティングのセンス」

――ただ、現実としてはフィジカルも求められる時代になりました。

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「フィジカルでは、速筋と反射の速さですかね。今はジャンプを跳べないと点数が出ないので、やはりトップレベルで戦うにはフィジカルは必要です」

――ジャンプもセンスというのはあるのでしょうか?

「(北京五輪代表の)鍵山(優真)くんを見ていると、すごく柔らかい膝を持っているし、瞬発力もあるし、空中のバランスも良くて。すべてを持ち合わせているなあ、と思います」

――男子は4回転を何種類も入れるのが、国際大会では普通になってきていますし、女子もロシア勢は次々に4回転をマスターしています。4回転時代とも言えますが、やはり跳び方は違うのでしょうか?

「ジャンプは少しずつ培って成長できる選手もいるはずですが、4回転を何種類も必要となると、そこまでいける選手は絞られてくるでしょうね。ただ、何も別のジャンプというわけではなくて。3回転、2回転と同じ感覚で跳ぶものだと思います。昔は意識として『難しい』と構えて跳んでいましたから、難しかったのもあったでしょう。最初に跳ぶ人が、やっぱり難しいもので」

――先生は、まず選手のどこを大事に見るのでしょうか?

「才能っていろいろあると思いますが、私は体の使い方やスケーティングのセンスを見てしまいますね。『ちょっとこんな感じで』とさりげなく振り付けをして見せた時、すぐに(感覚を)掴めるか。それが掴める子はセンスがあって、いちいち手と腕をここに持ってきて、と教えなくてもできます。スケートはジャンプだけでなく、結局はパッケージでプログラム全体が大事で」

――どんな練習から試合へのアプローチが基本ですか?

「練習は追い込みますし、ボロボロでいいですよ。泥臭く、美しくなくていい。プログラムをマストで滑って、細かく部分、部分で区切って(曲を)かけていく。リンクの状況もありますが、一番できる範囲内で試合の前は追い込んで、一回落ちて上がって。そのサイクルは作りたいですね」

――女性は成長期で体形が変化するし、思春期もあり、食事管理も大変ですね。

「難しいですね。親御さんはご苦労されているはずで。ケーキや揚げ物の食べ過ぎはまずいですが、しっかり食べさせないといけない。さもないと、栄養が偏って骨が弱くなり、故障につながるし、過食症や拒食症になってしまうこともあります。適度に食べて動いて、という状況を作り出せるか。“食べ力”ってあって、食べることは元気につながるので、そこはいいバランスで。故障が続いた時だけ、お母さんに『栄養士さんにご相談するのはどうですか?』って勧めます」

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長光歌子

関大アイススケート部コーチ 
1951年生まれ、兵庫県出身。66年の全日本ジュニア選手権で優勝するなど選手として実績を残すと、引退後は指導者として多くのスケーターを育てる。高橋大輔を中学時代から指導し、2010年バンクーバー五輪で銅メダル、同年の世界選手権で優勝に導いた。フィギュアスケートをこよなく愛し、現在は関大アイススケート部コーチを務める。

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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