アルバイト経験もない人生に選手は「不安」 WEリーグが挑むセカンドキャリアの道作り
「THE ANSWER」は、競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの対談連載をスタート。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第1回のゲストは日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」初代チェアに就任した岡島喜久子氏。中編では、WEリーグが組織として「ジェンダー平等」にこだわった理由、そして女子サッカー選手のセカンドキャリア問題について考えを交わした。(構成=長島 恭子)
連載第1回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×WEリーグ初代チェア岡島喜久子」中編
「THE ANSWER」は、競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの対談連載をスタート。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第1回のゲストは日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」初代チェアに就任した岡島喜久子氏。中編では、WEリーグが組織として「ジェンダー平等」にこだわった理由、そして女子サッカー選手のセカンドキャリア問題について考えを交わした。(構成=長島 恭子)
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井本「次は女性リーダーシップについて伺います。WEリーグは、参入基準に女性登用を義務付けた日本初のスポーツ組織です(※1参照)。現状、参入基準を満たしていないチームもありますが、各チームに対し、どのようにジェンダー平等を意識した組織作りを進めてもらうのでしょうか」
※1<WEリーグ参入基準(抜粋)>
1.クラブの運営にあたる法人を構成する役職員の50%以上を女性とする(入会から3年以内に達成すること)
2.クラブの意思決定に関わる者のうち、少なくとも1人は女性とすること(取締役以上が望ましい)
3.コーチングスタッフ(監督またはコーチ)の中に女性指導者1名以上を含むこと
岡島「まず、各チームの現状を公表しましょう、ということにしました。これまでは、例えば女子のコーチはいてもベンチに入っていない、遠征に同行していないなど、数字上では参入基準を満たしているものの、実態が伴っていないケースがありました。また、WEリーグでは女性リーダーシップ研修も行っていますが、残念ながら今年申し込んだのは1クラブのみです。
そこで、チームに組織図を出してもらい、取締役以上のポジションには誰がいるのか、役職員に女性は何人いるか、監督・コーチに女性がいるかどうかをチェックし、公表することに踏み切りました。公表は『形だけ』と批判する意味ではなく、改善するにはなぜできないのか、次のステップは何かを明確にすることが大事だと考えたためです」
井本「そもそも女子サッカーのリーグですから、運営母体が女性を採用・登用して当たり前だとは思いますが、Jリーグのチームも参入していますし、すべてのチームが参入基準を満たすには難しさもありませんか」
岡島「女性取締役に関しては現状、スポンサー企業や外部から採用するケースが多いのですが、きちんと外からよい人を選び、運営組織を作っています。ちふれASエルフェン埼玉は、グループ会社の女性取締役の方がサッカー事業に入っていたり、AC長野パルセイロはフィールドの異なるエンターテインメント業界で仕事をされていた方が取締役になりました。一方、クラブの規模が大きく、組織を動かすことに時間がかかるチームもあります」
井本「そもそも、男子サッカー界が男性社会ですから、変えるのは簡単ではないかもしれないですね。でも今の時代、WEリーグはもちろん、Jリーグにも女性の取締役がいていい。女性もサッカーを観ますし、多様性を考えたら至極当然のことですよね」