「子供は絶対に愛されるべき存在」 母になった大山加奈が2つの命と社会に持つ願い
多胎児家庭への支援、双子用ベビーカーの横幅…母になって発見したこと
多くの母がそうであるように、母の大変さを経験した。大山さんの場合は双子。多胎児ならではの悩みもある。
「同時に泣かれるとお手上げです。2人いるから、ちょっと泣かせておくのは仕方ないと自分に言い聞かせていますが、1人だったらすぐにだっこしてあげられるとよぎり、待たせている時は心苦しさがいっぱい。もっとだっこしてあげられる、もっと愛情をかけてあげられると思ってしまいます」
家事はすべて夫が担当。洗濯、掃除、料理をこなし、大山さんは子供に集中できる。5月から徐々に仕事を再開。妹夫婦やマネージャーらにサポートを受けている。「本当にたくさんの人の力を借りて……。それでも2人いる分の負担もかけてしまい、難しさを感じています」という。
一方、出産をしたことで、いくつかの発見があった。
例えば、ベビーカーを押しての移動はエレベーターの乗り降りもひと苦労。双子用は横幅を取るため、周囲への配慮を考えると、買い物すら「どうせ無理じゃないか」と躊躇。「多胎児家庭の方は私と同じような理由で家に閉じこもってしまう方がいるので心配になります」と打ち明けた。
アスリートならではの体の負担もある。怪我に悩まされ、引退した大山さん。「腰も膝も痛くて。まだ生活できるレベルですが、寝る前に毎日30分かけてケアしています。もう現役以上に。そうしないと次の日は持たないので」。4か月で8キロ近くに成長した2人を同時にだっこする時もある。
役所の手書きも何かと煩雑。予防接種の手続きは1人5枚分を計10枚書いた。良い発見もある。自宅のある品川区は生後3歳になるまでの乳児を育児中、区が提携している事業者「産後ドゥーラ」の家事・育児支援サービスの補助を受け、利用することができた。
「双子家庭は月120~140時間分の助成を受けられます。料理や子守りなどをやってくださる。ほかの区はそもそもなかったり、少なかったり。こういうサポートがもっと増えると、出産しようという方も増えるのではないか。私も産後ドゥーラさんがいなかったら、かなり厳しかったです」
元日本代表の杉山祥子さんら、バレーボール界の先輩ママにもアドバイスを受けながら育児に奮闘する日々。先輩に未来に視線を向けると、仕事と子育ての両立は「正直、まだ悩んでいる」というのが本音だ。
「保育園に入れるかも、その一つ。私は月~金のフルタイムじゃないからこそ、余計に。そもそも保育園はなかなか入れないので、入れるならもう動かないといけないとか。子育てをして悩むことが増え、日々悩んでいます」
特に、仕事中に周囲に任せる育児には常に葛藤がある。「うちの子はミルクを嫌がるので、我慢をさせてしまっているな」と感じる。
「そんな我慢をさせてまで仕事すべきなのか。でも、これは働くお母さんがそれぞれぶつかる壁と聞きます。SNSには『大山さんも感じているんだ』『心が楽になりました』というメッセージが届くので。そうやって同じ気持ちを共有し、自分だけじゃないという発信は続けていきたいです」