登坂絵莉が中学時代「太っても減量しなかった」理由 指導者と考えた「今」と「将来」
中学時代は太っても減量せず「目先にとらわれず、将来を考えることも大切」
さらに、登坂選手の減量法を掘り下げた。
伊藤「これまで減量がうまくいかなかった経験はありますか?」
登坂「減量の失敗は1度だけ。リオ五輪前の最後の試合です。それまで短期間で落とす減量をしていたのですが、五輪前に長期的な減量やってみようと。専門の方に見てもらい、2、3か月かけて減量しました。ただ、体重を落とすこと自体はうまくいきましたが、いざ戦うとなったらパワーが出なくて負けてしまったんです」
登坂選手の経験に対し、須永教授は「一般的に、体脂肪を燃焼させて体重を落としていく場合は長期的に取り組んでいくことが重要。ただ、登坂選手もパフォーマンスがうまく伴わないところがあったように、レスリングの減量は独特なのかなという印象を持ちました」と語った。
また、ネットなどに減量にまつわる情報が溢れる現状を踏まえ、登坂選手は「減量は人それぞれの方法があります。私も減量は体にとっては長期的にやった方がいいと思っています。私の体には長期的なものが合わなかっただけ」と安易に流されない意識の大切さを説いた。
伊藤「アスリートの減量もダイエットのイメージに結びつきがちですよね。自分に合ったコントロールを探すことが大切ですね」
須永「誰かが『これをやったから、何キロ痩せた』と言っても同じ成果は出ないこともあると思います。登坂さんは先ほど『これを食べたら、このくらい増える』と感覚で分かると言っていました。これが重要だと思います。そうすることによって、何をどれくらいやれば、どのくらい痩せるか太るか分かってくると、良いコンディションで体重を調節していくことができます」
伊藤「レスリング以外にも階級別競技があり、体が軽い方が有利とされる競技もあります。無理に減量したら、体にどんな影響がありますか?」
須永「体重を減らすには最終的に水分を減らすことが有効と考えられています。でも、頑張りすぎて脱水になると血液の循環が悪くなり、かえってパフォーマンスが低下します。水分を抜くために塩分を減らすと、低ナトリウム血症になり、疲れやすくなったり、足がつりやすくなったりしまいます。なんといっても女性アスリートの場合は減量のしすぎで、無月経になることも……。その辺については十分注意してほしいです」
逆に須永教授からも登坂選手に質問が。
須永「子供の頃から努力して、今は金メダルを獲るまでに成長しました。中学生の頃は体が成長して、身長とともに体重も増えたと思いますが、その点はどう向き合っていましたか?」
登坂「中学時代はどんどん体重も増えました。それで、階級を上げると結果を出せないから、体重を落とす選手が周りは多かったです。でも、私は目先のことだけじゃなく、将来を考えてコーチと話した結果、体重を落とさない選択をしました。なので、中学時代は減量せず、太ったら(体重が増えたら)その階級で出るというスタンス。その分、思うような結果を出せないことも多かったですが、目先にとらわれず、将来を考えることも大切。中学生はもちろん、高校生もですが、体重を落とし過ぎるのはどうなんだろうと思う部分はあります」