「言ってはいけない時代じゃない」 伊藤華英が「女子選手と生理」を声に出した理由
「もう、昔じゃない」…アスリートを“崇む”のではなくフラットなリスペクトを
競泳の指導現場は男性指導者が多く、伊藤さんも女性指導者に当たったことはないという。では、これから指導現場がどう変化していくことが、スポーツをする女性にとって助けになると考えるのか。
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「状況に応じて、婦人科に行くようにとか、もっと楽になる方法があるとか、教えられるメンター(相談役)の立場の人は今後のスポーツ界に必要。生理のことを相談できるのは友達か親。でも、その人たちではスポーツの知識がない。例えば、アメリカ、オーストラリアなどは環境が整っているし、ピルであっても低用量なら体に負担が少ないことは理解されていいと思います」
実際に、競泳では2005年頃から婦人科医が代表チームに入り、最近はJISS(国立スポーツ科学センター)でも婦人科が設定された。しかし、他競技を含め、まだまだ改善の余地はあると考えている。
「例えば、代表の招集には講習会があって『この先生に連絡できます』とか、そういう情報の共有をしてほしいと思う。それをジュニアの合宿とか、特に若いときからやってくれたら。婦人科の医師にもスポーツを専門にして学会で発表している方は多いけど、まだ日本の社会にアカデミックさに課題があり、現場とのつなぎが少ない。そういう部分から変わってほしいと思います」
今回、伊藤さんが声を上げたのは「女性アスリートと生理」の問題だったが、冒頭で述べた通り、根底にあるのはスポーツ界のへの思い。アスリートがさまざまな立場から声を上げ、自身の経験を伝えることで発展につながればと願っている。
「アスリートは自分が生きてきた世界が“当たり前”になってしまっている。自分が頑張ってきたことに価値があることを共感してほしい。もう、昔じゃない。もっとアウトプットしていい。今の社会はトップアスリートに対してのリスペクトが“崇んでいる”ような感じ。そうではなく、一人の人間としてフラットにリスペクトが生まれるようなスポーツ界になってほしいと思います」
<終わり>
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)