“普通の女の子”にだって憧れる 空手・植草歩が抱いた「女子力と競技力」という葛藤
競技に集中しつつ“女を捨てた”とは違う、オシャレが心の充実「幸せを感じる」
東京五輪で金メダルを首にかけることが最大目標。そのために全てを捧げる日々だ。世界選手権の連覇を逃した後、19年1月の国際大会で優勝した。「去年は勝ったり負けたりの一年間だったけど、それを乗り越えてきたから今は心が強くなったと思う。昔だったら言わなかっただろうなという言葉も出てくるし、行動もしていると思います」。気持ちの変化が強さに繋がったという。
では、女性と格闘家(アスリート)のどちらも最大限に満たし、両立させることは不可能なのか。この問いに植草は「いや、難しくないんじゃないですか。生きてきた中で今が一番、女子力が高いと思いますよ」と言い切る。世界選手権の負けで吹っ切れたと言っても“女を捨てた”とは違う。毎日パックもするし、美容院、ネイル、ニキビケア、体の保湿だって欠かさない。全身全霊で空手に打ち込みながらも、自分にとって必要な最大限のオシャレをする。
「オシャレは時間があるならしたい。そこは自分でオンとオフを作って、オフの時に友達と遊ばないでゆっくりネイルするとか、髪の手入れをやってもらうとか、そういうことに自分が幸せを感じる。自分が幸せだなと思うことをどんどんしていって、毎日を充実させていく方がいいなと今は思います」
やることさえやっていれば、オシャレにかまけて競技に集中していない……なんて一昔前の言葉はナンセンス。しかも、植草の場合はオシャレが精神面で力になるものの一つだという。No.1を目指し、大事な試合の時には髪やネイルを金色に染める。身近な小物類を金色にした時もあった。「(16年の)世界選手権の時にそれをやって初めて優勝した。自分がそれに藁にもすがる思いで『これをしたから大丈夫だ』と思って行っています」。いわゆるゲン担ぎだ。
格闘家女子だけでなく、女子アスリートにとって両立は一つの悩みかもしれない。葛藤を持つ子へのアドバイスを求めると、「オシャレはいつでもできますからね」と植草。「強くなりたい」と言いつつ、キャピキャピとした若い子を見たらどう思うのか。