英国で普及を阻む「野球=卑怯者」の考え 強烈すぎるクリケットの存在と米国への本音
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕。侍ジャパンに大谷翔平投手(エンゼルス)ら豪華メンバーが集結し、日本は大いに盛り上がっている。一方で、世界の野球に目を向ければ、2024年パリ五輪は競技から除外。予選の出場国は、209か国だったカタール・ワールドカップ(W杯)に対し、WBCは28か国に留まるなど、競技の普及・振興、国際化における課題も少なくない。
連載「ベースボールの現在地」#4、サッカーの母国・英国の野球への本音
野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕。侍ジャパンに大谷翔平投手(エンゼルス)ら豪華メンバーが集結し、日本は大いに盛り上がっている。一方で、世界の野球に目を向ければ、2024年パリ五輪は競技から除外。予選の出場国は、209か国だったカタール・ワールドカップ(W杯)に対し、WBCは28か国に留まるなど、競技の普及・振興、国際化における課題も少なくない。
【注目】応援のプロが楽しみにする『チアスタ!』での交流 チアリーダーHARUKAさんの想い
「THE ANSWER」ではWBC開催期間中「ベースボールの現在地」と題し、海外でプレー、普及活動をしてきた野球人の歩みや想いを連日発信。注目される数年に一度の機会だからこそ、世界の野球の今を知り、ともに未来を考えるきっかけを作る。第4回はサッカーの母国・英国から。2019年6月にはロンドンでMLBが史上初めて開催され、英国代表は今大会のWBCに初出場するなど近年は野球人気が高まっているように見えるが、その実情とは――。長年にわたってサッカーのプレミアリーグを取材する英国在住の日本人ジャーナリストが、旧知の現地記者を直撃。その言葉からは、“兄弟国”である米国発祥のスポーツ「ベースボール」への本音が見え隠れしていた。(取材・文=森 昌利)
◇ ◇ ◇
「WBC? ボクシングか?」
面白すぎた。しかしある意味、思った通りの返答だった。
質問は「WBCとはなんだ?」というシンプルなもの。聞いた相手はマーク・オグデン記者。2001年に西澤明訓がボルトンに移籍した際、地元の通信社で駆け出しの記者だった彼と知り合った。その後、マークは英高級紙「デイリー・テレグラフ」に移籍。2013年にはマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督の引退をスクープして、同年の英国最優秀スポーツジャーナリト賞を受賞した。現在は「ESPN」に所属して健筆をふるいながら、コメンテーターとしても活躍している。
このWBCが「ワールド・ベースボール・クラシック」の略だとタネを明かした。するとマークは「なんだ、ベースボールか」と呟いて、それなら知らなくても当然という顔をした。そこで筆者が「英国も代表チームを送っているよ」と追い討ちをかけると、「What!?」(なんだって!?)と短く叫んで、「本当か?」と聞き返してきた。
ここで彼に詳細を教えた。サッカーのW杯に当たる今回のWBCには20か国が参加し、英国はプールCの5か国に混じり、準々決勝ラウンド進出を懸けて4試合を戦う。会場はアリゾナのチェイス・フィールド。そしてプール初戦の対戦相手は米国だと――。
マークは「へぇ~」と言って、「正直驚いた。英国がそんな大会にチームを送り出すなんてね。しかし初戦がアメリカじゃ全くチャンスはないな」と言った。