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70歳から始めたマラソンで世界記録 86歳の現役女性ランナー「年を取るのは嫌じゃない」

軽快なトークを弾ませる谷川真理さん(右)と中野さん【写真:荒川祐史】
軽快なトークを弾ませる谷川真理さん(右)と中野さん【写真:荒川祐史】

谷川さんが考える走りの効果「身体的な代謝も、精神的な代謝もよくなる」

 どちらかと言えば「人見知りで暗い方だったの」という中野さんだが、マラソンと出会ってからは快活そのもの。週4日はランニングに出掛け、今年からはスポーツジムで水泳も始めた。さらにはアルバイトもこなす充実の姿に、妹たちから「マラソンを始めてよかったわね。笑顔が増えたから」と言われるそう。日常生活に運動を取り入れることは、体の健康だけではなく、心の健康を保つのにも一役買っているようだ。

 谷川さんは言う。

「日々運動することで、今日は調子がいいとか悪いとか、体の声が聞こえてくるんです。確かに走ると苦しい時や辛い時もありますが、今日はこんなに風が冷たいんだとか、湿度が高くて熱いなとか、自分の肌で季節を感じられる。外の空気を吸ったり吐いたりするだけで、体の中から元気が湧いてくると思うんです。身体的な代謝が上がるのはもちろんですが、精神的な代謝もよくなる。だから、陽子さんにも笑顔が増えたんじゃないかと思うんですよね」

 谷川さんの言葉通り、前向きそのものの人生を過ごす中野さんは「私は年を取るのは嫌じゃないの」と微笑む。その理由というのが、また粋だ。

 マスターズの大会では5歳刻みでクラス分けされ、それぞれに世界記録がある。中野さんが世界記録を持つのは80-84歳の部。「年を取れば、次の85-89歳の部では若い方で記録が狙えるから」というのが中野さんの考え方。今、86歳の自分は過去を振り返れば最も年を取って見えるが、未来に目を向ければ最も若い。視点の置き方1つで、世界はガラリと変わって見える。

 外出する前は玄関の鏡で姿勢をチェック。「スキーをしていた時、すごく上手な方がどこでも鏡があると必ずフォームのチェックをしていたの。それを見て私も始めて癖がついて、鏡の前で走る時のフォームを見たり、道を歩く時もガラスに映る姿を見るようにしています」。その効果は若々しくピンと伸びた背筋が物語っている。

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