五輪のマラソンを見て走りたくなった人へ 家を飛び出す前に知っておきたい注意点
かかとから接地する懸念「クッション性が高くても傷害リスク高める」
「一般的にはジョギングとランニングという言葉をなんとなく使い分けていますが、そもそも違ったもの。目的や期待される効果も変わってきます。この前提を理解して運動した方が良いですし、消費カロリーも違います。例えば、歩くから走るに動作を変えただけでジャンプ運動の連続となるため、消費は2倍以上。あとはスプリントをすると、成長ホルモンが多く分泌され、脂肪燃焼も長く続くという効果があると分かっています」(伊藤)
だからこそ、まずは自分が何を目的に走るのか考えることが必要だ。
「一つは効果・効能を頭に入れ、自分がありたい姿に向けて最適な手段を取った方が良い。靴も大切です。近所を走るなら硬いアスファルト。衝撃が土より圧倒的に強い。運動初心者はかかとが厚い靴の方が良いと言われますが、厚いからこそクッション性に守られ、走りにとって好ましくない、かかとから着地する現象が起きやすくなることが分かっています。クッション性が高くても、かかとからの着地は膝などの傷害リスクを高めます。
例えば、裸足で着地をしようとすると、かかとで着くと痛いので、自然にフォアフット(前足部あたりでの着地)に寄り、結果的に良い接地に変わりやすい。実際に裸足で走ったら動作が変わったというデータもあります。理想は芝生の上を裸足で走るのがいいですが、環境によっては難しいためランニング用のサンダルやソールが薄めのシューズを履いてみるのがオススメです」(伊藤)
「ケニアのランナーは自然とつま先から着地するフォアフットができている理由は、不整地を裸足で走る文化があるからだと思っています。日本人ランナーでも意識せずにできる人はいますが、ごく稀です。あとは知り合いの長距離選手からナイキの厚底にしたらフォームが変わったと聞きます。かなりつま先から接地がしやすい靴なので、自然と良い走りになる。靴にはそういう効果もあると思っています。
なので、競技能力は運動強度でシューズによって足が弱ったり強くなったりするケースがある。陸上の元100メートル日本記録保持者の伊東浩司さんは実業団時代、かかとから歩かないようにスーツの革靴のかかとを削っていたと聞きます。シューズ選びは奥が深くてすごく大切。僕自身も一時期はあまりに楽なので、厚底依存症になり、本来の“自足”を鍛えられなくなってしまったことがあります。
逆に、薄い靴でトレッドミル(室内ランニング機械)を走った時、厚底とスピードの体感が全然違います。靴が走らせてくる感じ。薄くすると、めちゃくちゃ速く感じるんです。その代わり、足の裏がパンパンになり、ちゃんと鍛えないと駄目だと意識させられました。今もトレーニングの一部で足袋のようなサンダルで走ったりしています。それくらい靴が体に与える影響は大きいです」(秋本)