どうすれば、お父さんは運動会で転ばないのか 陸上トップ選手が勧める“時短トレ”
200メートルハードルアジア最高記録保持者の秋本真吾氏(左)とアテネ五輪4×400メートルリレー日本代表の伊藤友広氏(右)【写真:編集部】
本番でダッシュをするなら、練習でもダッシュをした方がいい
秋本氏が練習で勧めるのは、ダッシュだ。それは「筋力低下型」に効果がある。上述のようにランニングの5、6倍の負荷がかかる全力疾走。練習から同じだけ負荷をかけることが最適だ。
「『ランニングでなんとかしよう』は少し難しいかなと思います。ランニングで体を動かしているお父さんでもアキレス腱を切ったり、転んだりするのをこれまで多く見てきました。毎日ランニングすれば、体は絞れてはきますが、練習で体重が減る=本番でスピードが出るとは少し違います。全力疾走でかかる負荷は別物。まずは全力疾走し、負荷に慣れる体を作ることが大切です」
全力疾走という言葉に気後れするかもしれないが、公園に足を運んでやる必要も、時間をかける必要もない。
「家の近所で坂道とか、電柱から電柱までの20~30メートルを3~5本やるだけでもいいと思います。1日おきに週3日やれば理想的。自分が会社員だったら仕事が終わって家に帰って着替えて30分〜1時間もランニングするモチベーションにはなかなかならないと思うんです。30mのダッシュ5本ならやれそうだなと思いますし、短時間でトレーニングも終わります。全力疾走に慣らしていくだけで『転ぶ走り』はかなり改善されると思います」
日常的にダッシュをする習慣がなければ、当然、体に変化が起こる。しかし、焦る必要はない。
「ランニングを常日頃からやっている人でもダッシュをやると、次の日、今まできたことのない箇所に筋肉痛になる例は多いです。それは、それだけ大きい力を発揮できていることと、普段そういう負荷がかかっていないことの裏返しです。スポーツをやっていない人は筋肉痛が来ると、ケガをしたんじゃないかと錯覚しがちですが、筋肉痛は保温すると血流が良くなって痛みも引いていくので、少しジョギングをしたり、お風呂に入ったりして、温めたりするといいです」
伊藤氏もケガ防止のため、徐々に慣らしていくことを勧め、筋肉痛が出ると好ましくない部位も指摘する。
「普段運動していない人は、まずは緩いダッシュからがいい。ジョギングより速いレベルからちょっとずつ上げていくのが望ましいです。基本的に足の後ろ側の筋肉を使う比率が大きい。走りがいい人は後ろ側、それも上部にくる。具体的には臀部、ハムストリング(太もも裏)の付け根。良くない走りになると、筋肉痛が下部に下がってきます。それは走りで余計な動きをしている表れ。ふくらはぎ、膝裏、太もも裏の真ん中より下が痛くなるようであれば、黄信号です。その場合はケガのリスクが高いので無理は控えてほしいです」
加えて「ジョギングをやっていたら、ジョギングの体に適応してしまいます。本番でダッシュをするなら、練習でもダッシュをした方が良いと思います」とまとめた。
【ダッシュのポイントまとめ】
・ランニングとダッシュでかかる負荷は別物
・練習で体重が減る=本番でスピードが出るじゃない
・近所の坂道、電柱間の20~30メートルを3~5本
・1日おきに週3日の実施が理想的
・緩いダッシュからペースアップが望ましい
・太もも裏の真ん中より下部に痛みが出ると黄信号