ブラインドサッカーと“声の力” 日本代表の緻密な指示と研ぎ澄まされる空間認知力
選手たちは「耳で得た情報を脳で映像化」していく
こうした緻密な指示を出しているのは、どうやら日本の特徴らしい。
「かつてブラジルでフル代表、U-23、U-15が合宿している時に5日間くらい視察させてもらったことがありますが、ガイドは『右だ』『逆だ』『そこでシュートだ』くらいしか言っていませんでした。またスペインは、GKがスローをする時に平気で『ピヴォ!(最前線の選手)』なんて指示を出しているので、対戦相手も分かってしまいますよね(笑)。その点で他国に理解できない日本語は多少有利です」
ブラインドサッカーに取り組むことで、選手たちのプライベートにも好影響が出ているそうだ。
「彼らは耳で得た情報を脳で映像化しています。サッカーでは刻々と変化する風景の中で動いているものを認知していく必要があるので、こうした空間認知などはどんどん研ぎ澄まされているようです。以前は時々電信柱にぶつかることがあったのに、それがなくなったなどという話も聞きます。選手たちとは、新宿南口とか、表参道のA4の出口などで待ち合わせをしても問題がありません」
彼らの備える才能は、十分に尊敬に値し、国際的な大舞台に立つに相応しいものだと、改めて中川は感心している。
(文中敬称略)
(第3回へ続く)
(加部 究 / Kiwamu Kabe)