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革新的ラグビーか、底知れぬ修正力か NZ対南アフリカ、W杯4強の激闘から占う頂上決戦の行方

死闘となったイングランド戦でタックルをする南アフリカのシヤ・コリシ主将(中央)。試合後にはHCへの信頼の言葉が溢れ出た【写真:Getty Images】
死闘となったイングランド戦でタックルをする南アフリカのシヤ・コリシ主将(中央)。試合後にはHCへの信頼の言葉が溢れ出た【写真:Getty Images】

僅差の競り合いを制す南アフリカ「ボム・スコッド」の存在

 翌日の南アフリカ-イングランドは、対照的な展開になった。キックを軸にしながら、接点での激しい攻防で四つに組み合う中で、ディフェンディングチャンピオンが残り2分で初めてリードを奪い、そのまま1点差を守り切るタイトなバトルは、数年に1回観られるか観られないかというゲームだった。わずか1点差での凱歌だったが、その奥深い強さに震えが起こるような80分だった。

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「今日は、自分たちにとってはいい試合ではなかった。でも、これもワールドカップです。イングランドは前評判は高くなかったが、ヘッドコーチのスティーブ(・ボーズウィック)、オーウェン(・ファレル主将)、そしてチームは団結し、彼らがどんなチームかを示したのです。彼らを称えるべきでしょう。でも、我々は反撃の術を見つけ出し、自分たちのペースを取り戻しました。今日見せた戦い、特にベンチスタートのメンバーをとても誇りに思います」

 FLシヤ・コリシ主将の試合後の言葉が、この死闘をよく物語っている。決意に満ちたイングランドの接点での挑戦、ハイパントの仕掛けと、王者が後手を踏むような展開が後半まで続いたが、南アフリカの80分間という与えられた時間内での修正力の高さは、今に始まったことではない。日本を舞台にした4年前のW杯ももちろんだが、フランスを29-28で破った今大会の準々決勝でも、後手を踏んだ序盤から15分、20分という時間で、立ち上がりとは異なる接点のバトル、スクラムで互角の展開に引きずり込み、初制覇を母国で実現しようという“レ・ブリュ”の野望を打ち砕いた。

 準決勝でも、イングランドに後半13分のドロップゴール以降スコアを許さない厳しい防御を取り戻し、一時は重圧を受けたスクラムで後半37分にイングランドFWにコラプシングを犯させて、SOハンドレ・ポラードの49メートルPGで勝負を決めた。

「もし終盤にイングランドが反則をしなければ」「もしPGの届かない位置でゲームを進めたら」と、この結果には多くの「もし」があるかもしれないが、ゲーム全体を観ていると、最後のPGでの逆転は決して偶然ではないと感じる。

 僅差のもつれ合いのようなゲームを続け、“ボム・スコッド”(爆弾処理班)と呼ばれる控えの選手でゲームを締める。観戦する中で感じたのは「時間の問題」という南アフリカの戦いぶりだ。この忍耐強さと、少ないチャンスをスコアにするエクスキューション(仕留める力)こそ、南アフリカの勝利のシナリオなのだ。日本大会で南アフリカの試合を見て感じた真綿で首を締め上げるような戦いぶりは、4年後の今大会でも変わらない。ちなみに、勝利を決めるスクラムを組んだFW第1列、逆転PGのポラード、そしてイングランドの最後の反撃を断ったSHファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)は、全員がボム・スコッドだった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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