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革新的ラグビーか、底知れぬ修正力か NZ対南アフリカ、W杯4強の激闘から占う頂上決戦の行方

ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会は20日と21日(日本時間21、22日)に準決勝2試合が行われ、28日(同29日)の決勝はニュージーランド-南アフリカに決まった。ともに優勝3度と、まさにラグビー界の盟主の座を懸けた決戦は、全く異なるスタイルが武器の両雄の激突という観点でも興味深い戦いになる。準決勝2試合で勝者2チームが見せた、これからの最先端のラグビーが目指す潮流と優勝の行方を考える。(取材・文=吉田 宏)

準決勝で38点差をつける完勝劇を演じたニュージーランド。ボールを動かし続けてアルゼンチンを圧倒した【写真:Getty Images】
準決勝で38点差をつける完勝劇を演じたニュージーランド。ボールを動かし続けてアルゼンチンを圧倒した【写真:Getty Images】

W杯フランス2023コラム、7大会連続取材「ラグビーライターの視点」

 ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会は20日と21日(日本時間21、22日)に準決勝2試合が行われ、28日(同29日)の決勝はニュージーランド-南アフリカに決まった。ともに優勝3度と、まさにラグビー界の盟主の座を懸けた決戦は、全く異なるスタイルが武器の両雄の激突という観点でも興味深い戦いになる。準決勝2試合で勝者2チームが見せた、これからの最先端のラグビーが目指す潮流と優勝の行方を考える。(取材・文=吉田 宏)

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 ニュージーランドが44-6と記録的なスコアでアルゼンチンに圧勝し、南アフリカは16-15という薄氷の勝利でイングランドを沈めた。対照的なゲーム展開とスコアになったが、これからの最先端のラグビーが何を目指していくのかというヒントが、ふんだんに盛り込まれた2試合だった。

 2大会ぶりの王座奪還に挑むニュージーランドは、革新的なプレーでゲームを支配した。大会公式のスタッツ(データ)を見て、1つの数字に溜息が出た。

「43分34秒」

 何かの間違いかと思うその数字は、「ボール・イン・プレー」と呼ばれるものだ。字義通り、80分間の試合の中で、実際にプレーが行われた時間を指す。半分強しかプレーしていないのかと思う方もいるかもしれない。だが、スクラムなどでプレーが止まるラグビーでは30分台が通常だ。

 ちなみにニュージーランドがアイルランドの猛攻を封じた準々決勝は38分46秒で、そこまでの大会最長だったが、準決勝はさらにプレー時間の長い、運動量が求められる試合をしたことになる。参考までに日本が敗れたアルゼンチン戦のボール・イン・プレー時間は31分15秒だった。

 もちろんプレータイムは、双方のチームが継続性のあるゲームを目指さないと伸びていかないが、準々決勝に続き、“オールブラックス”の試合でプレー時間が更新されていることを考えると、このチームがよりボールが動き続けるゲームを求めていることが推測できる。準決勝直前の練習でも、アルゼンチンが個々のユニットのメニューを中心に行っていたのに対して、ニュージーランドは3対2のアタックメニューでも、普通にパスをするだけではなくクイックパスを多用し、相手キックからのカウンター、そのカウンター後の密集からどう攻めるかなど、よりボールを動かし、流動的なシチュエーションからの攻撃的なメニューに取り組んでいる。伝統的に攻撃的なスタイルが持ち味のニュージーランドだが、このボール・イン・プレーの数字は相手の“協力”で偶然で算出されたものではなく、チームが目指すラグビーが弾き出した必然と考えていいだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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