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ラグビー日本代表に何が足りなかったのか 過去最高レベルのW杯8強、死闘に見た「世界との差」

防御の整備がなければ、4年後も難しい戦いを強いられる

 防御の裏返しのような話だが、攻撃面に目を向けると、少ない攻撃チャンスをいかにスコアに結び付けることができるかがポイントになる。南アフリカがフランス相手に敵陣22メートルラインを突破した回数は8回で、フランスの11回を下回る。この数字だけ見れば、フランスのほうがチャンスを作れていたことになる。

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 だが、1回の22メートル侵攻で平均何点スコアできたかを見れば、フランスの2点に対して南アフリカは3.2点と上回る。

 さらに顕著だったのがニュージーランドだ。敵陣22メートルライン突破は6回ながら平均3.6点をスコアしたが、アイルランドは15回と猛攻を見せながら1.4点しか奪えていない。

 南アフリカには攻守に驚異的なスピードを見せたWTBチェスリン・コルビがいて、ニュージーランドもWTBウィル・ジョーダン、レスター・ファインガアヌク、NO8アーディー・サベアというFW、BKのエースがトライチャンスを確実に仕留めている。

 だが、惜敗したフランスを見ると、今大会最多の6トライをマークしているWTBダミアン・プノーが南アフリカの防御の前にトライ“ゼロ”に終わっている。組織力の時代とはいえ、少ない攻撃回数でトライを奪う時代には、決定力を持ったランナーの存在が重要さを増しているのではないだろうか。

 では、日本代表の戦いぶりはどうだったのか。4試合を2勝2敗で終えて、総得点109、総失点107。1試合平均だと27.3得点、26.8失点になる。得失点の数字はイーブンという印象だが、相手を27点以下に抑えないと勝てないというのは、アルゼンチン戦の27-39というスコアがよく物語っている。

 平均27点台という攻撃力を高めるのも次回プール戦突破のためのキーポイントだが、この試合で露呈した簡単に突破を許してトライまで結び付けられた防御の整備がなければ、4年後も難しい戦いを強いられるだろう。来季からの大きな課題になるのは間違いない。現在の最先端のラグビーのトレンドが変わらない限り、誰が指揮を執るかに関わらず防御力を高めるのは急務の策だ。

 日本のゲームデータを見ても、アルゼンチン戦ではテリトリー(51%対49%)、ポゼッション(48%対52%)、ラン回数(107対113)など、かなり互角の数値が多い。その中で、22メートル突破はアルゼンチンの倍近い11回を記録しながら、平均得点では2.1点と、アルゼンチンの6点には遥かに及ばない。準々決勝のデータでも触れたように、攻撃を仕掛けながらフィニッシュに持っていけなかったことも、防御の脆さと同時にプール戦敗退の一因だろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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