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ラグビー日本代表に何が足りなかったのか 過去最高レベルのW杯8強、死闘に見た「世界との差」

準々決勝4試合のデータに見られた「勝者が低い」数値の傾向

 あれだけの接点のファイトとアタックを見せたフランスがどうして負けたのか。ゲームのデータからは、興味深い数字が読み取れる。

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 過去にも何度か紹介してきたが、ゲームの優劣の判断材料となる80分間の地域支配率(テリトリー)、ボール保持率(ポゼッション)は、ともに負けたフランスが南アフリカを上回っていた。勝者のテリトリーは37%に過ぎず、ポゼッションも40%だ。確かに、わずか1点差の接戦はどちらが勝者でもおかしくない内容ではあったが、この傾向は前日に行われたニュージーランドVSアイルランドでも同じだった。ニュージーランドのテリトリーは41%、ポゼッションも45%に止まっている。

 準々決勝で最大の点差がついたアルゼンチンVSウェールズに関しては勝者の数値が上の項目が多かったが、この「勝者が低い数値」という傾向はイングランドVSフィジーでも見られた。このような数値は他のデータでも同様で、攻撃総距離、ラン回数、そして敵陣22メートルライン突破回数など攻撃に関する項目の大半で敗者が勝者を上回っていたのだ。

 この数字が物語るものは何か。様々な解釈ができるが、相手に何次攻撃をされても、スコアされずに守り続けることができたチームが、最終的にスコアで上回っていると考えることができる。

 象徴的だったのは、ニュージーランドVSアイルランド終了目前で起きたアイルランドの37次攻撃だ。スタンドやテレビで観た多くの人たちが、アイルランドがいつトライを決めるのかに注目して、固唾を飲んで展開を見つめていたはずだ。しかし、重要なのは、ここまで目の眩むような連続攻撃を仕掛けて、結果的にインゴールに侵入できなかったという現実だ。あのシーンこそ、今回のデータが物語るラグビーの「いま」を示している。

 どのスポーツでも攻撃と防御は、いたちごっこのように、どちらが優位かというトレンドを繰り返してきたし、これからも同じようなことが続いていくはずだ。アタックが優位ならディフェンスの進化が加速するし、守りが高まれば、それを崩そうとする攻撃が追い上げる。

 前述したように防御有利の時代が続き、その中でいくつかの挑戦的なコーチが率いるチームは、強固な防御を乗り越えようと冒険的なアタックに挑んできた。だが、それはいまだに挑戦の領域の出来事で、メインストリートを歩くのは、従来通りディフェンス優位、重視の戦い方であり、防御力の高いチームが準決勝に駒を進めている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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