開頭手術を乗り越えて 不屈の男・土佐誠が、三菱重工相模原と目指す歴史的な1勝
「あまりデカいことは言いたくないですけど……勝てます(笑)」
移籍した三菱重工相模原では、すぐに仲間として受け入れられた。「入って1試合プレーした時から、僕はこのチームが大好きになりました」と満面の笑みを浮かべる。加入から5か月後にはキャプテンに任命されたが、「僕はあまり言うタイプじゃないですし、そうあるべきだとは思いません」と話す。
「もし僕がこのチームにずっといる選手だったら、入ってきたばかりの人間にダイナボアーズの歴史を語られたくはない。本当に僕よりこのチームをよく知っている選手、思っている選手がいるので、僕はチームが1つの目標に向かって勝てるようにしていこうと思っています。
少し意識が変わるだけで、チームとしてすごく良くなると思うし、実際かなり良くなってきたと思います。チャレンジリーグでもトップリーグにいたチームといい試合ができるようになったり、トレーニングマッチでもいい試合ができるようになって、だんだん選手たちは『俺たちはもうトップリーガーなんだ』と気持ちの変化が見えてきた。スタッフも『トップリーガーなんだから勝てる』と自信になる言葉を投げかけてくれる。実力も自信もあるチームに変われたと思っています」
今季チームが目指すのは、記念すべきトップリーグ1勝目だ。そのためには「選手は頭の中をクリアにして、みんなで同じイメージを持つことが大事」だと話す。
「この試合がチャンスだとか、この試合は抜いていいとか、そういうことを考える余裕があるチームではない。一戦一戦、スタッフからもらった作戦を実行することが大事です。そうすれば、歴史に残る1勝が転がり込んできてくれるかな、と。今まで応援してくれた相模原市の皆さん、三菱重工の社員の皆さん、12年前に悔しい思いをしたOBの皆さんに、いい知らせを届けたいですよね。
このチームには本当にいろいろなバックグラウンドを持った選手たちがいて、この相模原市に集まって、同じ作戦を実行しようと頑張っています。じっくり試合を見ていただくと、この選手はこういうプレーをするんだって、1人1人の個性が見えてくる。すべてがガッチリ組み合わさった時、ダイナボアーズの力が一番大きく発揮されるはずなので、多様性が1つになる時をぜひ見に来ていただきたいですね」
多様性が1つになった時こそ、勝利の女神が三菱重工相模原に微笑む時なのか。
「あまりデカいことは言いたくないですけど……勝てます(笑)」
その言葉、信じよう。
土佐誠(とさまこと)
1986年6月28日、島根県生まれ。188センチ、112キロ。ポジションはLO、NO8。中学時代は野球少年だったが、肘の治療に訪れた病院で勧められ、広島・尾道高校に進学。文武両道を掲げる梅本勝監督が立ち上げたラグビー部1期生となり、3年生で花園出場を果たす。関東学院大学では1年生からレギュラーの座を掴み、2年生では大学日本一を経験。4年生で主将を務めた。NECでは副将を務めるなど、チームの中心選手として活躍。2017年からプロ選手として三菱重工相模原でプレーする。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)