村田諒太「この一戦に懸けないとダメ」 将来より大切な今、痛感した“夢の危険性”
大切なのは一瞬への集中力「大きな野望は重要じゃない」
昨年10月、憧れの米ラスベガスで初めて世界戦を行った。当時の目標は海外のトップ中のトップに君臨するボクサーを振り向かせ、東京ドームで数万人規模の試合をすることだった。本場で強さを示すため、ロブ・ブラント(米国)との防衛戦に臨んだが、判定負けで王座陥落。今では、先の大きな目標を見据えることが“失敗”だったと捉えている。
「モチベーションって、実はブラント1戦目の時だって持って行っていた。じゃあ、何がなかったかというと対策だと思います。モチベーションとか、夢とか、東京ドームとかって言い始めると、そこにばかり焦点がいって中身がない。今回に関してはしっかり中身がある。それに集中することですね。大きな野望とか、世にいうモチベーションというものは別に重要じゃない。この試合に対して集中することが一番重要」
今年7月のブラントとの再戦を2回TKOで制し、失ったベルトを奪回。引退覚悟で挑んだリングは、相手を倒すことだけを考えていた。復活を遂げ「モチベーションっていうと、例えば大きな目標だと思うんですね。大きな目標を追いかけると足元を見れなくなる。そこはあんまり考えていない」と強調する。ボクサー人生における次戦の位置づけを問われても「ないですね」と言い切り、こう続けた。
「それは振り返った時(にわかること)だと思う。なんでもそうだけど、金メダルを獲った時もボクシングなんかさよならだと思っていたら、振り返るとスタートだった。そういう意味では全てのことは振り返った時だと思う。終わってみてから感じることだと思う」
この試合がどういう意味を持つのかは、終わってからわかればいい。「本当にいいトレーニングができているので自信はあります」。周囲の期待や喧騒には関係なく、一瞬に集中する強さを身につけたようだった。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)