「自分が空手界を盛り上げないと」 強行出場で涙、5年ぶりのV逸で震えた植草歩の唇
空手界の“顔”として「子供たちに負けから強くなった姿を見せたい」
取材中も話せば話すほど涙が出た。先週のプレミアリーグ(PL)マドリード大会でも初戦敗退。東京五輪代表選考レースでは2番手以下を大きくリードしているが、元世界女王として危機感を抱く結果に終わっていた。今大会は有力選手が多く欠場。植草は3日に帰国したばかりだったが、強行出場を決めた。時差ボケの残る頭には、確かな責任感があった。
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「全日本に出場した理由も、子供たち、ファンの方に空手の楽しさを伝えたいと思って出場した。自分が空手界を盛り上げないといけない」
空手は2024年パリ五輪の追加種目から落選している。現状では東京が最初で最後の晴れ舞台だ。植草は結果的に連覇を逃したが「(出場の選択に)後悔はありません」と言い切った。空手が五輪種目になる時から注目を集め、引っ張ってきた。東京五輪があるから競技を続けた。かつての大会にはいなかった記者が目の前に大勢いる。「自分が出ることで注目を集められたのならよかった」。30人近い報道陣に囲まれながら唇を震わせた。
取材が終わると、観客席から身を乗り出す子供たちから「植草選手、サイン下さーい!」の大合唱。卒業後も練習拠点を置く母校・帝京大の後輩たちが一斉に抱き着き、慰めてくれるほと“可愛がられる先輩”だ。
「五輪は空手界で重要な大会。強くなるために頑張るだけじゃだめ。頑張り方を変えて強くなりたい。もっと子供たちにキラキラした姿を見せて、負けから強くなった姿を見せたい。(台頭する)若い選手から感じるものもある。それは空手界にとっていいことだし、私が強くなるためにもいいこと。後輩たちともっと強くなろうと思います」
東京五輪の女子61キロ超級は8月8日。ちょうど8か月前の負けが植草を強くする。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)