阿部兄妹の入れ替わった明暗 兄の示した屈辱からの這い上がり方、妹は試練を越えるか
宿敵丸山との五輪争い、取り戻した「前に出る柔道」
「(丸山とは)いつも接戦で、気持ちと気持ちのぶつかり合い。一番に考えたのは、気持ちの面かなと思った。今日はそこで勝ち切れた。負ける時、少し下がって負けてしまったり、不用意なところを持って負けてしまったので。
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やっぱり気持ちと気持ちの勝負。自分が妥協しなかったら絶対に負けないと思っていた。今回は妥協とか一切なしで、一番は気持ちの部分。ぜっったいに気持ちで上回ってやろうと思っていた。絶対に引かない。気持ちでは引かないと思っていました」
この日、初戦の2回戦は背負投げ、3回戦は腰車で一本勝ち。準々決勝はロシア選手に残り1分30秒で体落としによる技ありで優勢勝ちし、準決勝は背負い投げの一本勝ちで相田勇司(国学院大)を下した。決勝も恐れず前に出る姿勢を貫いた。
「自分の持ち味は、ガンガン前に出る柔道。いつも少し引いてしまったので、全面に出していこうと意識してやった結果、いい流れに繋がった。相手が前に出てきたところで合わせられたので、本当にああいうふうに前に出られてよかった。今日、絶対に勝たないといけない中でしっかり勝ち切れた。少し自信になった。まだまだですけど、この勝ちを生かしていきたい」
涙を流した世界選手権から3か月。今度は派手に輝きを放った。その約20分後、今度は妹・詩が悔しさを味わった。世界ランク1位のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)との決勝。迎えた延長3分40秒。ブシャールに肩車をかけられ技あり。勝敗が決した。相手が渾身のガッツポーズをする横で審判を茫然と見つめた。
礼を終えると、両手を膝につく。簡単に畳から降りることができない。ジュニア、シニアで初めて海外勢に敗北。通路で福見友子コーチに肩を抱かれると、号泣しながら引き揚げた。
「自分の情けなさと悔しい気分です。最後まで戦い抜こうと心に決めて挑んだ大会だった。お兄ちゃんがしっかり勝って、自分もやってやろうと思っていたんですが、最後の最後に甘さというか……。
お兄ちゃんが優勝してきて、腹をくくったというか、やってやろうと思ったんですけど。神様からの試練と思って、オリンピックで優勝するためにこういう思いがあるんだと思いながら、前に進んでいきたいです」