3連勝の夜、4万人が姫野和樹の名を叫び続けた 日本のNO8を成長させた「濃い2年間」
代表デビューからの“濃密な2年間”、姫野を成長させた主将抜擢
日本代表デビューは2017年11月4日のオーストラリア戦だった。以来、代表として研鑽を重ねた日々は「濃い2年間」だったという。「25歳なんですけど30歳くらいになったんちゃうかな?って思うくらい年取った感じがする(笑)」と破顔するが、子供の頃から夢見た桜のジャージ。「その夢が叶っているわけですから、すごく充実していますよ」と声を弾ませる。
代表選手を中心に構成されるサンウルブズやウルフパックの一員として海外チームと対戦。かつて日本はフィジカル面で不利とされてきたが、海外選手との肉弾戦を重ねた姫野は「日本人でも全然フィジカル的に負けていない。強みに変わりつつあるんじゃないか」と自信を持つ。
FLやNO8は、スクラムやラインアウトのセットプレーからいち早く飛び出し、相手にプレッシャーをかけたり、サイドアタックを仕掛けたり、激しいタックルでボールを奪い返したり、相手に捕まった味方選手のサポートに行ったり――。パワーとスピードに加え、瞬時に適切な状況判断をする能力が求められる。このポジションを究めるためにも、姫野は普段から「物事の本質を見るようにしています」という。
「何か問題が起きた時に、しっかりと本質を見て、何が必要で何がダメ、じゃ次は何をしようっていうことを、すごく考えられるようになりました。グラウンドでプレーするのは選手だけで、監督やコーチがいるわけではない。試合中の問題解決は、選手が瞬時に判断していかないといけないですから。トヨタではキャプテンもやっているんで、そこは意識するところですね」
愛知県の春日丘高から強豪・帝京大に進んだ姫野は、大学卒業後に地元・愛知に拠点を置くトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入した。だが、入社から1か月ほど経ったある日、就任間もないジェイク・ホワイト監督が、姫野にキャプテン就任を打診。南アフリカ代表で2007年W杯を制した名将から託された大役。大学を卒業したばかりの22歳は、これを引き受けた。
「めちゃくちゃ大変でしたよ(笑)。本当に社会人になって、すぐの話。社会人という新しい環境に慣れるだけでも必死な状態でしたし、トヨタ(ラグビー部)の文化も分からない。何も分からない状態で大役を任されたんですけど、本当にその1年はしんどかったです。でも今思うと、あの1年があったからこそ、今の自分がいるんだと思います。むちゃくちゃ大きな経験でした」