「緊張で10日寝られなかった」“強気の男”田村が漏らした本音に見た、日本苦戦の理由
いつもの田村に戻った試合後「やっとラグビーができるという感じ」
大会開幕前までのキャップ数は58。百戦錬磨の田村だからこそ、自分とチームが平常心でプレーできていないことは手に取るようにわかったはずだ。素直に緊張を認めるしかなかったほどの立ち上がりだった。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」(W-ANS ACADEMYへ)
この日のロシア代表は、明白なゲームプランで挑んできた。今月6日に日本が7-41と圧倒された南アフリカ代表からヒントを得たように、密集戦に人数をかけず、2次、3次のライン防御を固めてきた。そこにロシア風の“味付け”として、闇雲にラインを上げずに、しっかりと面を作って日本に攻撃スペースを与えない防御を敷いてきた。
参加20か国で最も勝利への重圧を受けていたのに加えて、ロシアの永久凍土のような固い防御に苦戦を強いられたが、苦闘の中で司令塔・田村の頭脳はトライのイメージを算出していた。
密集周辺のダイレクト・プレーが武器の大柄なロシアだからこそ、横への揺さぶりは苦手なはず。日本の1次、2次攻撃は固いライン防御をしてきたが、4次、5次と連続攻撃が出来れば、外にスペースが空くはずだ。この方程式が“正解”を出したのが、前半11分、38分のWTB松島幸太朗のトライだった。最初の一撃はラインアウトからの5次攻撃、2本目もラインアウトから13次で仕留めて、ゲームの流れを引き寄せた。
試合直後のコメントから、シャワーを浴びて囲み取材に応じた時には、田村は次を見据えていた。「このいちばんプレッシャーのかかる試合に勝って、しかも5ポイント取った。それがいちばんでしょ。(次戦から)やっとラグビーができるという感じです。プレーの精度も上がっていくでしょうし、あとは準備するだけです」。いつもの強気な田村が戻ってくれば、世界ランキング1位のアイルランドとの対戦にも、恐れることは何もない。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)