“小さい日本”がW杯で知った現実 世界が弱点と見た「サイズ問題」に必要な一手
コンタクトの強化必須、ラマス監督「ワールドクラスに対応するため」
チェコ戦のディフェンス時は、身長201センチの大型PGトマシュ・サトランスキー(ブルズ)に対して198センチの馬場雄大がマッチアップ。192センチでディフェンスに定評のある田中大貴(ともにアルバルク東京)が先発に抜擢された。田中は所属チームではSGだが、今夏からW杯に向けてコンバートされたばかり。メインPGだった178センチの篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)を補う狙いがあった。チェコ戦の日本の先発平均は203センチ。指揮官は言う。
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「大貴を先発起用したのは、相手のPGが2メートルクラスなので、対応できるようにするため。SGも、PGも2メートルクラス。馬場にサトランスキーをマークさせ、大貴はSGにつけた。サイズを大きくするために2人を入れた。今後も大貴はPGとして成長すると信じている。これから世界と戦うには、大きなガードに対応できるように彼のような選手が必要」
体を張った守りで機能した場面もあったものの、結果的にはサトランスキーに15得点。3ポイントは日本の4本に対し、11本をねじ込まれた。田中は「国際大会ではコンタクトでスタミナを奪われる。ヘッドコーチが言うように、上に行くために必要なのはコンタクト」と痛感。チーム全体のサイズアップは道半ばではあるが、母国のアルゼンチン代表を12年ロンドン五輪で4位に導いた名将の取り組んできた強化策の一つだったという。
「チームの平均身長(今大会は199センチ)は徐々に上げているつもりです。私が(17年7月に)就任した1年目が191.7センチだったのと比べたら、上げた効果がコートに出ている。ディフェンスは改善してきているし、これからも取り組んでいく。これからも世界基準の大会でワールドクラスに対応するために、サイズを意識して入れないといけない。
米国や欧州と比べると、日本はコンタクトの少ないリーグ。国内ではなかなか経験できないが、我々でトレーニングする時は意識していきたい。フィジカルコンタクトは直していけると信じている。1年ではなかなか改善できないが、長い目でやりたいと思う」
篠山は「フィジカルを上げるからといって、じゃあウエートトレーニングをやるとか、そういう単純なことじゃない。体のぶつけ方も技術の一つ」と語る。どっしりとした体つきの海外勢に比べ、一見すると、八村はやや細い印象だが、当たり負けはしない。体幹の強さだけでなく、当て方など工夫できる部分は他の選手も21歳のエースから見習うべき点かもしれない。
サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツは言うまでもなく、野球や個人競技でも体格差で優位に立てない日本人。世界との距離をぐっと縮めてくれたバスケ界でも、改めて積年の弱点に直面した。だが、選手や監督は“永遠のテーマ”の打破に挑戦している。
田中をコンバートしたように今の国内トップ選手で構成していくのか、新たな有望選手を発掘するのか、ジュニア世代から長身選手を育成していくのか。日本代表を向上させる打開策はいくつもある。
一昔前より大型選手が増え、伸び盛りの“小さい日本”が現実を知った3試合。次は7、9日の順位決定戦に回る。13年ぶりに出場したW杯で本気の世界と5試合も戦えるのは貴重な機会だ。収穫を持ち帰る時間は、80分残されている。「史上最強」と称され、夢を抱かせてくれた日の丸戦士たち。また一つ「史上最強」を塗り替えていく姿に期待したい。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)