大野将平はどこまで強くなるのか 「何の驚きもない」世界一に見た“絶対王者の神髄”
柔道世界選手権の3日目が27日、東京・日本武道館で行われ、男子73キロ級で2016年リオ五輪王者の大野将平(旭化成)が金メダルを獲得した。決勝でリオ五輪銀のオルジェフ(アゼルバイジャン)に内股で6試合をオール一本勝ち。2013、15年以来4年ぶり3度目の優勝を飾った。
五輪争い最激戦区の73キロ級、4年ぶり3度目V「他の選手より上のステージで戦う」
柔道世界選手権の3日目が27日、東京・日本武道館で行われ、男子73キロ級で2016年リオ五輪王者の大野将平(旭化成)が金メダルを獲得した。決勝でリオ五輪銀のオルジェフ(アゼルバイジャン)に内股で6試合をオール一本勝ち。2013、15年以来4年ぶり3度目の優勝を飾った。
「僕は今日、優勝するだろうと思って試合に臨んでいたので、特に何の驚きもありません」
メダリスト会見。カナダ国籍を持ち、女子57キロ級で初優勝した出口クリスタ(日本生命)が「自分がまさか優勝できると思っていなかったので、驚いている次第でございます…」と緊張気味に言った直後に、大野が放った言葉だ。さらりと語る表情から風格がにじみ出ていた。
手のつけられない高みにいる。全6試合を一本勝ち。両手を広げて相手の道着を掴みに行く様からは、強烈な威圧感が放たれていた。がっぷり四つで組み合い、五分五分の状態を作り出してから一本を狙う古き良き日本柔道を貫く五輪王者。今大会は、ライバルの昨年王者アン・チャンリン(韓国)が負傷欠場し、優勝の大本命とされていた。
「簡単ではないけど、自国開催だし、周りの『大野は勝つだろう』という期待の声をひしひしと感じていた。プレッシャーが力になった。やりすぎなくらい準備をするしかなかったですかね。やっぱりこれでいいって思ったら負けだと思ったので。自分の納得するまで、本当に試合の直前まで準備はできたのかな」
畳に上がる前の最後の1秒まで、東京五輪会場の日本武道館を楽しむように心と体を整えた。2回戦から登場し、ハンガリー選手に1分7秒で内股一本。3回戦はヨルダン選手に1分22秒内股で一本勝ちすると、4回戦では12年ロンドン五輪66キロ級金のシャフダトゥアシビリ(ジョージア)に1分45秒で大外刈りを決めて一本勝ちした。トルコ選手との準々決勝でも残り26秒に腕挫ぎ十字固めで一本勝ちを収めた。
ロシア選手との準決勝は残り2分34秒に技ありを取ったが、ビデオ判定で取り消された。それでも攻めることをやめない五輪王者は掴んだ襟を離さない。何度も技を打ち、残り1分7秒にも技が掛かると大歓声。しかし、またも取り消される結果になった。
繰り返し流れる場内の映像に納得のいかない観客から「うそだろ!?」と不満の声を上がった。だが、結局は残り14秒で合わせ技一本を決める勝負強さを発揮。流れの悪い展開にも、五輪を含めて世界を3度制した男は、揺れ動きそうな精神を制御しにかかっていた。
「自分の中で実況してました。『あ~、これは逆転で負けるパターンだ』みたいな。『これはなんかキワキワのところでポイントを取られて逆転負けだなぁ』とかっていうのはずっと考えてましたけど。嫌な流れだなっていうのは思っていました」