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「アホか!」とぼろくそに怒られた 平尾誠二の「熱くて、泥臭い」華麗じゃない素顔

平尾流の「創造的破壊」こそが強さの源泉

「チームに入ってみると、やはり海外の情報なんかに敏感だった。そして、日本のラグビーを、新しい戦術や考え方で引っ張っていきたいという思いが、チームの文化になっていた。平尾さんも他の先輩たちも、勝ち続けるためにはいままでと同じことをやっていたらアカンと、よく話していましたね。いまあるものを壊して、新しいものにチャレンジしていかないと勝てないと」

 平尾氏が生前よく使っていた言葉に「創造的破壊」というものがある。まさに元木氏が語った、新しいものを作るためには、従来のものを打ち壊す必要があるということを言い表したワードだ。

 京産大のヘッドコーチを続ける中でも、元木氏の中に故人の教えが脈打っている。

「僕も判断という面では厳しくしてきたんです。考えてプレーしないことには、先につながっていかない。いまは、すごく形ありきというラグビーになりつつある。なので、日頃から考えさせて、プレーさせることが重要になっている。もともとラグビーというのは自由なものです。サインがあるから、絶対にやらなきゃいけないというスポーツじゃなくて、防御や相手の状況で常に変化していくのです。個人個人が判断する中で、周りがそれに反応し合っていくのが、ラグビーの面白いところですから」

 平尾氏が活躍した同志社大ラグビー部の標語ともいえるのが「自由に」だ。この言葉の通り、平尾氏を中心としたチームは、形にとらわれることなく、自由奔放でありながら合理的なラグビーで、当時は前人未踏と称えられた大学選手権3連覇を達成した。その自由でセオリーに囚われないラグビースタイルは、神戸製鋼にも引き継がれ黄金時代の礎となった。

 すでに黄金時代からは20年以上の時間が流れ、ワールドカップ日本大会を前に平尾氏が世を去ってからも3年が経つ。史上初のベスト8入りに挑戦する桜のジャージーを着る後輩たちを、元木氏は「昨年のイングランド戦とかを見る限りは、実力はあるなと思います。日本代表のレベルは上がっているという期待感はありますよ」と前向きだ。

「僕らのときは世界にどうチャレンジするかという考えでやっていたけど、いまは世界にどう勝つかに変わってきている。世界がすごく身近になっている」

 平尾氏と共に戦い、見つめ続けていた“世界”を、いまの元木氏は、より近い位置で感じている。故人が思い描いた時代の鼓動が高鳴る中で、ワールドカップ日本大会は開幕を迎える。

平尾 誠二(ひらお・せいじ)
1963年1月21日、京都市南区生まれ。現役時代のポジションはCTB、SO。京都市立陶化中からラグビーを始め、伏見工(現京都工学院)高では主将だった3年で全国制覇。同志社大では1年から主力メンバーとして活躍して、2年から大学選手権3連覇。神戸製鋼でも88年度から全国社会人、日本選手権7連覇を達成。19歳4か月という当時の最年少記録で日本代表入りして通算35キャップ。ワールドカップには第1回から3大会に出場して、第4回大会は監督として采配を振るった。

元木 由記雄(もとき・ゆきお)
1971年8月27日、大阪府東大阪市生まれ。現役時代のポジションはCTB。東大阪市立英田中から本格的にラグビーをはじめ、大阪工大(現常翔学園)高では2、3年で高校日本代表入り。明大に進学して1年から主力選手として活躍し、同2年で日本代表入り。ワールドカップには日本選手でただ一人4大会に出場。代表通算キャップは当時最多だった79。2010年3月に現役を引退し、U-20日本代表監督に就任。13年に京産大BKコーチに就き、15年からヘッドコーチ。現役時代のサイズは176cm、86kg。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)


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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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