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スター軍団で唯一の「生き残り」がPO敗退に号泣 創設から7年、チームとともに成長した細川智晃のハンドボール人生【リーグH】

シュートを放つ細川。チーム最多の4ゴールを挙げた【写真:中戸川知世】
シュートを放つ細川。チーム最多の4ゴールを挙げた【写真:中戸川知世】

「東京から世界へ」の変わらぬ思い

 細川自身も20年のジーク誕生とともにプロ契約。しばらく仕事も続けたが、今はハンドボール一本のプロとしてプレーする。「(土井)杏利さんとか(高間)アミンとか、すごい選手が入ってきて試合に出られない悔しさはありました。でも、それ以上に成長できた」。

 もともと攻撃は得意だが、守備には課題があった。昨年引退した土井から多くのことを学んだ。「杏利さんはディフェンスが上手。強いメンタルも含めて、学ぶものは多かった。今年自分が活躍出来ているのも、杏利さんの影響が大きい」と話した。

 武器は圧倒的なスピード。身長は174センチでチーム一の小柄だが、身体能力はチーム内でもトップレベルだ。守備も安定した今季は出場時間も伸び、スタートからの出場も増加。今季のレギュラーシーズンは、RB蔦谷大雅の95点に次ぐ86点とチームで2番目のゴール数を記録した。「今までで一番調子はよかった。守備から速攻というチームの目指す形に自分の持ち味が生きた」と振り返った。

 メンタルも変わった。「今までは限られた時間で結果を出すことばかり考えていたけれど、経験を積んで余裕もできた」と細川。「ずっと若手と言われてきたけれど、もう30歳。中堅です」。これまでは遠慮もあって自ら発言することは少なかったが「自分の中で何かを変えなければと思い、思ったことを口にするようになった」。チーム内でのコミュニケーションはよくなった。

 準決勝のベンチ入り16人中、新旧の日本代表とフランス代表が13人。信太、東江、玉川と代表主将経験者が並び、GK岩下祐太や蔦谷、部井久と21日に日韓戦に臨む現代表も名を連ねる。世代別代表を含めて代表経験がないのは細川だけ。「頼れる先輩はいるし、頼もしい後輩もいます」。それでも「自分にできることはあるし、自分にしかできないこともある。自分らしいプレーでチームを勝たせたい」と、初のリーグ制覇だけを目指して話していた。

 チームの歴史のすべてを知り、チームとともに成長してきた。だからこそ、自らの手でリーグ制覇を成し遂げたい。敗戦ショックを振り払い「来年こそは必ず優勝します。少し休んでリフレッシュし、また練習します」。7年前の1月、トライアウトで誓った「東京から世界へ」と「東京から日本一を」。スター軍団の中で生き残る「雑草」の強さで、細川はあきらめることなく頂点を目指す。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)


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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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