井上尚弥の防衛戦を回顧

　ボクシングの世界スーパーバンタム級（55.3キロ以下）4団体統一王者・井上尚弥（大橋）が4日（日本時間5日）、米ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナでWBA世界同級1位のラモン・カルデナス（米国）との4団体防衛戦に臨み、8回45秒TKO勝ちした。2回にダウンを喫しながらも逆転。大人気ボクシング漫画家は「リアルがファンタジーを超えている」と絶賛している。

　ピンチを乗り越えた偉大な王者を称えた。大人気ボクシング漫画「はじめの一歩」の作者、森川ジョージ氏は自身のXに『井上尚弥ーカルデナス』と記して、感想を投稿。「井上選手は自分に何が求められているかを知っている。そして危険域に踏み込んでそれを実行する。必ずスペクタクルを魅せようとする」と、その姿勢を称賛した。

　ダウンに関して、「今観衆の多くの関心は『誰が井上を止めるのか』にあり、それをまたはね返す試合をする。全盛期のタイソンと状況が似ている」と、元ヘビー級3団体統一王者マイク・タイソンの名前を引き合いに出しながら、「自分で試合を作り自分から攻め常にKOを目指す。そりゃ多少もらうよ」と状況を慮った。

　井上ダウン時のカルデナスのパンチについて、「練習してきたものだと思う」とその性質を分析しながら、「いつものことながら対井上戦で相手はボクシングで上回ろうとは思っていないと思う。必ず攻めてくるからその打ち終わり、もしくは同時に渾身のスイングをしてくる。今後もこれは続くだろう」と表現した。

　その上で「わかっていながら井上選手は飛び込んで行く。その勇敢な姿に僕は痺れる。無敵無敗だから応援しているわけではない。技術や狡猾さより勇気と力のTheボクシングを魅せてくれるから見逃せないのだ」と、王者に惹かれる理由を語っている。

「ダウンをとられながら逆転KO勝利というのは漫画では常套だが現実ではとても少ない。30戦でしかも世界戦で2度もやってのけた。リアルがファンタジーを超えている」

　最後はファンタジーを描いてきたボクシング漫画家として、井上へ最大級の賛辞を贈った森川氏。「素晴らしい試合を観た後は自分も気合いが入るのだが、井上選手の試合観戦後は『また仕事がやりにくくなった』と机に向かう気が失せる」と、複雑な心境を語っていた。