「あの野村萬斎を、息が切れるほど走らせる人は多分いない(笑)」 羽生結弦さんがコラボに感慨【囲み取材一問一答】
「あの野村萬斎を、息を切れるほど走らせる人は多分いないと思うので(笑)」
――この会場、notte stellataでSEIMEIを演じる意味。
「これまでnotte stellataでコラボさせていただいた方々ももちろんそうなんですが、フィギュアスケートでコラボするということだけを考えるわけじゃなくて、どんな方がコラボレーションとして、ゲストとして来てくださったら格のある、どなたが見ても素晴らしいと言ってくれるショーになるだろう? ということをいつも考えながら、企画の方と打ち合わせをしていました。
notte stellataというものを立ち上げる当初から、萬斎さんとはいつかコラボレーションしたいということを話していて。その一つであったボレロというものが鎮魂と再生の物語であるということも含めて、絶対やりたいなと思っていたので。こうやって現実になってみると、まだまだ何か夢のようにふわふわした感覚では正直あるのですが、ちょっとでも萬斎さん、野村萬斎という存在を受け入れるに値するスケートやショーの構成に近づけたのかなと思えてはいます、手応えとしては」
――宮城の被災地、故郷でこの時期に連続で、健康にショーを続けている事への想いは。
「もちろんチケットを購入されて、体調崩して来られなかったっていう方ももしかしたらいるかもしれないですし、新幹線の問題とかでも難しかった方ももしかしたらいらっしゃるかもしれない。グランディという利府の地もかなり交通の便が悪いので大変だとは思う。
でも何かそういった中で、僕ら以前に来てくださる方々が健康であって、体調悪かったとしてもHuluだとか配信等でご覧になってくださっている方々がいて。それだけでも僕らは十分幸せだなという気持ちでいっぱいです。もちろん僕らも全身のエネルギーがなくなるほど酷使しながら演技をさせていただいていますし、今まで自分がアイスショーに対しての意気込み、エネルギーの出し切り方みたいなものが、どんどん今回は他のスケーターにも伝播していて『こんなにやりきってくれるんだ』っていうぐらい、他のスケーターたちも出し切ってくださって。あの野村萬斎を、息が切れるほど走らせる人は多分いないと思うので(笑)。
本当恐れ多いのですが、でも萬斎さんも全力でSEIMEIを演じ切ってくださっているので。僕らは多分、エネルギー量的に、体力的にはもう全然健康じゃなくなってきているんですけれど、これを見に来てくださっている方々が拍手を送ってくださったり声援を送ってくださったりしている姿を見て、この場で生きてらっしゃるんだなということをnotte stellataだからこそ改めて感じられて。僕らが震災のときに立ち上がっていけたように、絆みたいなものどんどん広がっていってくれたら嬉しいなという気持ちでいます。僕、リハーサルのときに野村萬斎さんが息を切らしてらっしゃって『大変なことをしてしまっているな……』と(笑)。本当にSEIMEIの最後のところ、ずっとダッシュしてくださっているんですけど、なかなか本当に……申し訳ないなって思いつつも、でもそれに応えてくださる萬斎さんの力量、器みたいなものまた改めて尊敬しています」
――SEIMEIをやるにあたってこだわった点、代名詞と言われる演目をどう消化できたか。
「いつもはSEIMEIを演じるときは、僕自身が安倍晴明のモチーフになって滑るということが一番多かった。今回は安倍晴明本体が出てきて。それに使役する従者というか、式神のようなイメージで構成を練って演出もしていただけました。完璧で不思議な存在である安倍晴明がそこにいるからこそ、式神は式神らしく、完璧ではなく、ある意味力を与えられしもののような立ち振る舞いをしなくてはならないなということを込めて、力をずっと入れながら。
いつものSEIMEIというプログラムで滑っているときよりも、ずっとフルパワーで滑っているような。一つ役割を与えられて、一つの役割をこなして、また紙の人形って。また呪を唱えられて、役割を与えられて……というような物語を2人の中で想像しながら、構成を練ってきました。今までのSEIMEIの感覚とは違って、役割、ちょっとこじつけかもしれないですけど、自分が今このnotte stellataというアイスショーに出演させていただいていることとか、自分が生きていることの役割とはなんぞやということを何か改めて問われているような気もしました」
(THE ANSWER編集部)
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