緊急事態のチームを救った23歳新星 7季ぶりのB1復帰へ、バスケ神戸が手にした価値ある1勝
負傷者続出の状況に森山HC「僕らに余裕はない」
神戸は今季開幕から攻守の中心として期待されたアイザイア・アームウッドの欠場が続き、10月21日の山形ワイヴァンズ戦で初出場となったものの、わずか1分16秒のプレーで負傷し、そのまま離脱するという苦境に立たされながらの戦いが続く。この間、チームは日本でのプレー経験も豊富なナイジェル・スパイクスと契約し、そのスパイクスも献身的なプレーでチームに貢献している。
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一方で、昨季からの主力であるトレイ・ポーターが前節の岩手ビッグブルズとの2連戦を欠場するなど、万全の布陣からはほど遠い状況での戦いとなることもしばしばだ。開幕から4分の1にあたる15試合を9勝6敗、B2西地区2位の滋賀レイクス、3位の熊本ヴォルターズと勝敗で並ぶというまずまずの成績で終えることとなったが、森山HCは「僕らに余裕はない」ときっぱり述べ、厳しい台所事情を隠さない。
「今日で言えばJC(キャロライン)がいなかったし、岩手戦でもJCとトレイ(ポーター)がいなかったという状況です。僕はずっとB2でコーチをしてきていますが、この2~3年ほどで急激にB2のレベルが上がっています。そうした中で、外国籍選手が欠けた中で試合をするのはかなり大変だという印象です。その中で、今はディフェンスが安定してきているので『多少スローペースな試合にしてでも、勝ちきる』という目標を作って我慢しているという状況です。ただ、ゆくゆくはここから戦力が整ったタイミングで、ベースとしてディフェンスの堅実さを持った状況で戦うことができる……と考えれば、先を見越すのなら良いことなのかもしれません。ただ、目の前の試合に対してはめちゃくちゃしんどいです」
この日の試合でも、終盤にポーターが足を痛めて一時的にベンチに下がるなど、森山HC曰く「ちょっと血の気が引く」という場面にも遭遇した。ただ、そうしたタフな状況を過ごしつつも、ディフェンス面での向上、あるいは金田のようにシーズンを通じて新たな切り札が現れることが、B1昇格に向けて大きなピースとなっていくことも、また事実だろう。
越谷との第2戦でチームを救った金田に対して、森山HCは「思い切ったプレーを出してくれているうちは、今後も使っていきたい」と振り返った一方、金田もまた今後の活躍に向けて意気込んでいる。
「今日は活躍することができて勝てたわけですが、1試合だけの結果では成長にはつながらないとも感じているだけに、『これを継続してやることが大事』とも考えています。ここで慢心するのではなく、来週からまた切り替えて頑張っていきたいです」
ここ数シーズン、B1へ昇格したチームを見れば、相手の突破力に優れた選手たちへのディフェンスで注目を集めた鶴巻啓太(茨城ロボッツ)や小針幸也(長崎ヴェルカ)、あるいは思い切りの良いオフェンスを次々に見せていった岡田泰希(仙台89ERS)や角田太輝(佐賀バルーナーズ)らのように、シーズン中に若い日本人選手がブレイクすることが昇格のきっかけになるケースが往々にしてある。ベテラン選手も多く在籍する神戸において、チーム内の競争を打ち破り、金田がここから注目度を一気に上げることができるか。主力選手のコンディション不良に悩みながら戦い続ける神戸にとっては、一つの転機になるようなゲームだったかもしれない。
(荒 大 / Masaru Ara)