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井上尚弥が怒りをぶつけた33秒 遅刻に怒った5年前を彷彿、上から目線のフルトンへ「上等だよ」

ボクシングのWBC&WBO世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチが25日、東京・有明アリーナで行われる。24日は神奈川・横浜市内のホテルで前日計量が行われ、挑戦者の井上尚弥(大橋)が55.2キロ、2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)が55.3キロでパス。フェイスオフでは珍しく怒りを露わにし、世界的ビッグマッチへの強い決意を滲ませた。戦績は30歳の井上が24勝(21KO)、29歳のフルトンが21勝(8KO)。試合はNTTドコモの映像配信プラットフォーム「Lemino」で独占無料生配信される。

33秒にわたるフェイスオフでフルトンを睨みつける井上尚弥【写真:浜田洋平】
33秒にわたるフェイスオフでフルトンを睨みつける井上尚弥【写真:浜田洋平】

7.25世界戦へ前日計量

 ボクシングのWBC&WBO世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチが25日、東京・有明アリーナで行われる。24日は神奈川・横浜市内のホテルで前日計量が行われ、挑戦者の井上尚弥(大橋)が55.2キロ、2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)が55.3キロでパス。フェイスオフでは珍しく怒りを露わにし、世界的ビッグマッチへの強い決意を滲ませた。戦績は30歳の井上が24勝(21KO)、29歳のフルトンが21勝(8KO)。試合はNTTドコモの映像配信プラットフォーム「Lemino」で独占無料生配信される。

 モンスターの枷が外れてしまった。フェイスオフの号令が出た直後だ。井上から王者へにじり寄る。両目の視線は絶対にそらさない。25秒ほど経過。写真撮影のため、関係者が前を向くように促して制止しても、両者とも譲らなかった。「上等だよ」。井上は小さく笑みを浮かべ、うんうんと頷いた。33秒の熱い前哨戦。牙を向け、周囲をヒヤリとさせる一触即発の状態だった。

 約15分後の取材では笑顔を見せるなど冷静だったが、腹の中では感情が渦巻いていた。

「燃えてきましたね。腹が立ったので。(どの点で?)顔(笑)。視線の送り方とかあるじゃないですか。上から来てんなと。上等だよって思います。メンタルも仕上がっています」

 上半身裸で対面し、試合前に体格差を直にチェックできる貴重な時間。「(減量は)あまりきつそうに見えなかった」としつつ、「体はきちんと見られていないので、これから写真とか見ていく」と振り返った。陣営の大橋秀行会長が「今回は気合いの入り方が凄まじい」と驚いていた4階級制覇挑戦への過程。視線は王者の顔面にしか向かないほど集中していたようだ。

 過去2度のノニト・ドネア(フィリピン)戦前には互いに敬意を払うコメントを繰り返したように、普段冷静な井上がここまで感情を表に出すのは珍しい。過去の例に挙がるのは2018年5月のジェイミー・マクドネル(英国)戦。相手は体重をなかなか落とせず、前日計量に1時間10分も遅刻した。悪びれない王者の態度に待たされた井上は怒り心頭だった。

 フェイスオフが始まった瞬間、頬がヒクヒクと動き、今にも飛び掛かりそうな横顔だった。計量後は「ふざけている。謝りの言葉一つない。陣営の態度にもイラッとくる」と感情を吐露。「(怒りを)試合でぶつけたい」と誓った通り、112秒TKO勝ちで鉄拳制裁を加えた。今回はこの時以来5年2か月ぶりの挑戦者。フルトンを睨みつける怒りの表情は当時を想起させるものだった。

 感情が湧き出る理由は、相手の態度によるものだけではない。22日の公式会見でフルトン陣営のワヒード・ラヒームトレーナーが海外メディアの記事を持ち出し、過去の試合で井上のバンテージの巻き方に不満を吐露。同記事では拳に硬さを持たせるものとされていたが、ルール上認められたやり方で何の問題もない。井上は思わぬ指摘を受ける格好となった。

 計量後に取材に応じた井上は、相手陣営の指摘に「ビビってるんじゃないんですか、単に」と切り返し。「ローカルルールをわかってないんでしょうね。(米国でも)その州のルールがあるので」とした一方、王者には「たぶんフルトン本人はそんなこと思ってないでしょうけど、トレーナーとかがそこはしっかり考えるのは当たり前。本人同士の間で(バンテージの話題で)どう思うとかない」と受け止めた。

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