エース欠く一戦で36分51秒の奮闘 バスケ横浜BC、頭部5針負傷のPGが引き出した新たな強み
唯一のPG森井健太をフル稼働させるための戦い方
青木勇人ヘッドコーチ(HC)は「35分は絶対に超えるだろうと思っていて、多ければ38分くらいまで考えていました」と事前のプレータイムに関する想定を振り返る。指揮官は森井を信じ、同時に負担を減らす工夫をしていた。
「12月の半ばの三河戦でも(河村選手が体調不良で欠場して)39分プレーした試合があって『行けないことないな』というのがありました。今日はまず彼がどれだけ第4クォーターにフレッシュになれるかがテーマでした。マッチアップを少し変えて(守備の負担を減らして)疲労をコントロールしようと考えました。もう一つプレッシャーをかけすぎて、ファウルトラブルで(プレータイムを)削られるのが嫌でした。(マッチアップが変わったことで)自分より大きい選手につく可能性があったので、その時のリバウンドで手を絡めてファウルで重ねてしまうと第4クォーターまで持たない。そういった話を森井にしていました」
森井はこう振り返る。
「相手のメインの選手、例えばベンドラメ(礼生)選手に対して普段は僕がマークするんですけど、今日は須藤(昂矢)選手や赤穂(雷太)選手が対応してくれました。そういった助けがあって自分はプレーできました。自分の持ち味はディフェンスですし、高いエナジーでゲームの展開を変えるのが役割だと思っています。でも今日は(無駄な)ファウルをしてはいけなかったし、40分間出られるようにする駆け引き、最後の5分にディフェンスできるペース配分をしていました」
この試合の森井はファウルが3つで、そのうち2つは後半。終盤に守備の強度を上げる余力を残せていた。
攻撃は徹底してインサイドを強調するプレーメイクが勝利につながった。青木HCは「渋谷も(2日の宇都宮戦で退場し、出場停止だった)マカドゥ選手が出られていない中で、どう相手の足を削りながら第4クォーターに勝負をかけるかを考えていました」と口にする。
マカドゥ不在の渋谷は、インサイドがケビン・ジョーンズとライアン・ケリーの2枚。機動力のある、スキルの高い2人だが、ゴール下の守備力はあまり高くない。横浜BCはセンターのチャールズ・ジャクソンがフィジカルにプレーし、コンタクトで相手を消耗させつつ得点とリバウンドを稼いでいた。
この試合でジャクソンは34得点、16リバウンドを記録している。対する渋谷のジョーンズは15得点、ケリーは19得点と決して悪いスタッツではないが、3ポイントシュートの成功率は2人合わせて「20分の2」の10%と苦しんだ。これは森井のプレーメイクと、ジャクソンの「足を削るプレー」が効いた部分だろう。