「勝って、朝まで呑みたかったな」 日本が沈んだ夜、久保竜彦の背中に哀愁が漂った
失点の直前、声色に焦り「やばい、やばい、やばい……あー、来る」
一転、後半は立ち上がりからムードが変わった。
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いきなり浅野が決定機。「おお! うあ! 最後、浅野?」。リプレーを見るとトーンを落とす。「全然、(足に)当たっとらんやん。すねに当たっとる」
15分。ペナルティエリアのすぐ外でFK獲得。「誰が蹴るん? 堂安が蹴るん?」。相馬の右足は枠を外れる。
1度目のトイレに立った直後の24分。伊東が中央から突破。ペナルティエリアのライン付近で倒される。「あっ! あー!」「PKか! 外か?」。FKも外れる。
この日一番の声が出たのを最後に、ムードは停滞。推進力を生まないバックパスに、画面も動きも生まれない。そして――。
36分。吉田が守田に送ろうとした浮き球をカットされる。途端に「やばい、やばい、やばい……あー、来る」。声色から伝わる焦りが、予感させた。
「あー……」。背もたれに大きな背中がついた。
後半42分。相手ゴール1メートルに迫る決定機。「鎌田、準備できとらんかったね。赤(のユニホーム、エリア内に)何人おるんや」
後半47分。三笘が左サイドの突破からエリア内に侵入。「ヤバイな、なんなんこいつ。なんであれで抜けるん。なんやろな」。しかし――。
試合終了。0-1。重い空気が支配する編集部内。
前後半で6本のビールを流し込んだ久保は、顔色を変えず、冒頭の「運が悪かったわな」の言葉を残してトイレに立った。
その言葉の真意とは――。
直後にインタビューを実施。試合のハイライトを見ながら、失点シーンにつぶやいた。
「あの流れだと、つなごうとするやろな。(マイボールを)大事にしたいって」
失点につながった理由から、スペイン戦で起用すべきFWまで、独自の視点を語った。
そして、編集部を後にする。去り際、口にした言葉はドラゴンの本音だった。
「勝って、朝まで呑みたかったな」
日曜夜、人通りの少ない山手通り。LDHと並ぶ中目黒のランドマーク、ドン・キホーテの光に照らされた久保の背中は少し寂しく、足元は寒そうだった。
なお、インタビューは近く配信する。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)