無名大学からB1琉球のエース格へ 今村佳太の飽くなき向上心、優勝を逃し涙した意味
CS決勝での悔しさを糧に「チームを救える選手になりたい」
第1戦は33分、第2戦は36分。今村はチームで一番長くコートに立ちながら、ゴール下へ切れ込み、3ポイントシュートを放ち、比江島、鵤誠司ら宇都宮のキーマンにマッチアップした。フリースローの前には疲労を少しでも軽減するために念入りに屈伸し、気づけばコンプレッションタイツの膝は擦り切れて穴が空いていた。
第3戦への望みをかけた第2戦の終盤は、「こんなところで終わりたくなかった」と猛攻の主軸を担い、タイムアップまで残り22秒で2点差にまで詰め寄った。
しかし、それでも届かなかった。
試合終了のブザーが鳴り響くなかで今村は大きく肩を落とし、挨拶を終えた後はフロアに座り込んで体を震わせていた。そして、セレモニーが始まると頭を上げた。
新潟の無名大学からB1強豪クラブのエース格に成長した今村のキャリアは、称賛に値するものだ。しかし、A代表への定着を目指す26歳の若者には、まだまだ多くの伸びしろがある。今までのキャリアで最も高い場所で味わった悔しさが、今後の彼にどう影響していくかを見つめていきたいという思いで、ファイナルで感じた課題を尋ねた。
今村は言った。
「明確にこれっていうのは、まだ分からないです。ただ、チームの流れが悪くなった時に、活躍するのでなく救ってあげられるような……苦しい時に何かチームにいいことをもたらせるような選手になりたいと思っていて、そこはファイナルではなかなか出しきれなかったところじゃないかと。今回の経験を生かして、突き詰めていきたいです」
仲間のピンチを救う選手になる――。これは今村が様々なメディアで話していることで、2年前、琉球との契約が発表される前に行ったインタビューでも同様のことを話していた。
目指すのはチームを引き上げるエースではなく、支えるヒーロー。今村の新たな旅路が東京体育館から始まった。
(青木 美帆 / Miho Aoki)