全治12か月を乗り越えたB1王者・千葉の逸材 22歳PG大倉颯太の覚醒を呼んだHCの助言
大野HCが母校の後輩に伝えたアドバイス
もう一つ、大倉がこの試合で“攻め気”を見せていた理由がある。大野篤史ヘッドコーチ(HC)は明かす。
「彼に伝えていたのは『上手くやろうとしすぎている』『バランスを取ろうとしすぎている』『もう少し自分が何をできるか証明しなければいけないよ』というところです。クリエイトとバランスを取るばかりになって、玄人好みのプレーをしていた。若さ、アグレッシブさを出してほしいと言いました。今日のゲームでそこが見えて良かったです」
合流後の5試合中4試合で、大倉は10分以上のプレータイムを得ている。一方で得点は伸びていなかった。
なお大野HCにとって、大倉は野々市市立布水中の後輩に当たる。大野は1992年、大倉は2014年の全国中学生大会優勝メンバーだ。大野HCは続ける。
「もちろん(アグレッシブなプレーは)チームのためになりますし、彼の今後のキャリアを考えてもいい影響を与えます。彼を小さい時から見ているので、もう少しこのリーグの中でも存在感を増していけるはずだ、と話しました」
大倉は言う。
「それこそ昨日ですね。僕が練習中に自分のチャンスを生かさないで、綺麗にプレーしようとしていた。『それだけだったらオフェンスもいいリズムにならない。まずアタックを狙って、その後ディフェンスの反応を見て判断する感じでやったらどうだ?』と言われました」
あれだけの確率で入るなら、シュートを打たない手はない。もちろん得点の怖さが出れば、相手はもちろん大倉の警戒を強めるだろう。しかしそうなれば今度は味方が空く。そうやってオフェンスのリズムは生まれていく。
大倉は東海大の2年次、3年次にも千葉の特別指定選手として、練習や試合を経験している。ルーキーとはいえ、チーム戦術やインテンシティへの戸惑いはない。
「(チーム戦術の)理解は100%していると思っていますし、あとは選手との信頼関係です。後から入ったので、努力しなければいけないことはたくさんあります。HCに言われるまで、自分にどういう役割があるのか模索しながらやっていました。そこで自分らしさを出してからこそ分かることがある、と言ってもらえた。まずは積極的に行って、どんどんアドバイスをもらって、成長していきたいと思います。今日みたいに、今日よりもっと、アグレッシブに点数を取りにいきたい」
コンディションについて尋ねると、明るい表情でこう返してくれた。
「パフォーマンスにはなんの影響もない状態です。船橋整形外科病院さんをはじめ、千葉ジェッツのトレーナーの皆さんに日々サポートしてもらっています。メディカルチームの方がいるからこそ、これくらいパフォーマンスに影響なくやれていると思うので、本当に感謝しています」
(大島 和人 / Kazuto Oshima)