内村航平が着地に秘めた美学 東京五輪落下から3か月、苦闘の末に出た「会心の一撃」【THE ANSWER Best of 2021】
結果以外の喜びを味わった内村の今後「その追求はやってみたい」
生まれ故郷の北九州市で世界体操。「お客さんに楽しんでもらいたい」。五輪と世界選手権を合わせて8連覇。結果を求め続けた男が、結果以外の何かを求めるようになった。予選では一人観客席に歩み寄り、サイン入りの日本代表Tシャツを投げ込んでプレゼント。この日は、日本代表の後輩たちを連れて同じようにファンサービスをした。
「結果を気にせず、お客さんに見てもらう、楽しんでもらうのはできた。いつもは終わってから『あれがこう、これがああだ』とか演技のことを考えるけど、今日は全くないんですよ。(低い得点は)いい練習を積めなかったのが理由。その中でも、あの着地で全てを伝えられたのかなと思いますね。あの着地はもうできない。もう出せないです」
着地のほんの一瞬で「内村航平」を表現した。後輩たちにも着地の重要性を伝えてきた。「もうこれ以上ないです。やり切ったというのが正直な気持ち」。しばらくは休養に充てる方針。進退の決断は「別に今する必要はない。そうとう考えないと。そんな簡単じゃない」と熟考していく。
ただ、この日味わった快感は、次の境地への第一歩になるのかもしれない。
「体操は『自分が自分であることを唯一証明できるもの』です。体操をやることについて、今日結果じゃないものを知れた気がする。『スポーツは結果が全て』と言いましたけど、『結果が全てじゃないな』と。そこの追求はやってみたい」
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)