比嘉大吾は帰ってきていない 闘争心失い、陥った野獣の迷路「やる理由がわからない」
ボクシングの元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)が13日、東京・後楽園ホールで1年10か月ぶりの再起戦となる119ポンド(53・98キロ)契約ノンタイトル8回戦に臨み、ジェイソン・ブエナオブラ(フィリピン)に6回2分25秒TKO勝ちした。2018年2月4日に故郷・沖縄で2度目の防衛に成功して以来、739日ぶりの勝利。体重超過による資格停止を経てリングに上がったが、ボクサーとして大切な「闘争心」を失っていることを赤裸々に明かした。
体重超過から1年10か月、再起戦勝利も大切な「闘争心」が蘇らない「心と体が違う」
ボクシングの元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)が13日、東京・後楽園ホールで1年10か月ぶりの再起戦となる119ポンド(53・98キロ)契約ノンタイトル8回戦に臨み、ジェイソン・ブエナオブラ(フィリピン)に6回2分25秒TKO勝ちした。2018年2月4日に故郷・沖縄で2度目の防衛に成功して以来、739日ぶりの勝利。体重超過による資格停止を経てリングに上がったが、ボクサーとして大切な「闘争心」を失っていることを赤裸々に明かした。
比嘉は笑っていた。1年10か月ぶりのリング。過去と同じく入場時は「Conquistador(征服者)」が流れた。具志堅用高会長も現役時代に使っていた曲。2005人が集まった超満員の後楽園ホールは、復活の期待のこもった熱が充満した。リングに足を踏み入れると、熱気は急上昇。「おかえりー!」。笑みを浮かべ、右拳を突き上げて応えた。リングサイドにいる記者席から見ても、歓声を心地よさそうに受け止めているように映った。
復活へ向けたゴングが鳴る。ガードを固めながら懐に入り込もうとした。パンチを繰り出し、敵を下がらせる。効いた瞬間にさらなる追撃を加えようと歯を食いしばって前に出た。うまくはいかない。ただ、一歩も引かず、仕留めにかかる姿は世界王者だった頃を思わせた。2度のダウンを奪って快勝。大興奮のファンとは対照的に、リング上でインタビューに応える勝者は冷静だった。
「疲れました。この試合の内容で怒らないでね。(大吾コールは)聞こえましたね。ありがとうござます。今回、いろいろ試合が決まる前、東京に来て18歳の時に世界チャンピオンになりたいと思っていた気持ちも薄れて、モチベーションがない中で(応援のおかげで)ここまで来れました」
ちゃめっ気たっぷりで可愛げのある性格。資格停止期間を振り返り「ニート生活していた。ニート最高」とおどけて見せたが、会場のファンから「正直になれよ!」と声が響いた。「この気持ちだったらやっても意味がない。熱狂的な応援があっても本人にやる気なかったら意味がない。このままモチベーションが上がらなかったら辞めようとも思っている。今後については考えます」。少し静かになった客席は、後押しするように大吾コールを響かせた。
リングにいたのは、かつての比嘉大吾ではなかった。「ファンも辛口コメントだと思う」と、出来の悪さは自分が一番理解している。世界王者時代より3階級上のスーパーバンタム級に相当する53.9キロ契約で臨んだ一戦。階級の壁を感じたのか。今後はどこで戦うのか。「体力を戻さないとバンタムがどうとかわからない。『体力がきつい』で頭がいっぱいいっぱい」。ファンも気になる問いだったが、答えを考える以前の問題だった。
18年4月にWBC世界フライ王座3度目の防衛戦の前日計量で、リミット50.8キロを0.9キロ上回る体重超過を犯して王座剥奪。体重超過は国内の世界戦では日本人初の失態となり、日本ボクシングコミッション(JBC)からボクサーライセンスの無期限停止などの処分を受けていた。
一度は引退を考えたが、周囲の勧めもあり練習再開。王座剥奪から約半年後には、親交の深いWBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)の海外合宿に参加したこともあった。だが、最大68キロまで増えた体は思うように動かない。贅肉が鉛のようにへばりついた。