村田諒太「普通の王者では許されない」 108秒の“代打スピーチ”に込めた王者の責任
岩佐、田中、寺地、京口、それぞれの世界王者が見据える“上”とは
表彰式後の取材。「今日は一翔も尚弥も来ないから、急に控室で『今日、スピーチを』とか何とか言われて、『何?』と思った(笑)」と“代打スピーチ”に冷や汗をかいた。常日頃から「自分がボクシング界を引っ張るなんていう意識はない」と強調する34歳。それぞれが自分の道で懸命に拳を振るっていることを尊重している。この日も、ともに上を目指す仲間の存在に刺激をもらった。
「みんながそれぞれの道を行っているわけですけど、その中で今日受賞された選手というのは、ただのチャンピオンではない。ただ世界チャンピオンという皿を持っていればいいというわけではなくて、やはり上を目指している選手たちだと思う。
どうしても世界チャンピオンの数がこれだけ多くなってしまうと、一つ一つが目立たない。だから個々がどういう形でやれば盛り上がっていくのか、目立つのか、みんなが考えていることだと思う。その中で本当にいい刺激し合える仲間だと思います。今日も多いに刺激をもらったので、また頑張ろうと思います」
壇上で村田の言葉を聞いた日本人世界王者たち。それぞれ何を思い、“上”を目指すのか。昨年12月にIBFスーパーバンタム級暫定王者となった岩佐亮佑(セレス)。米ニューヨーク、慣れない海外開催で11回TKO勝ちの王座戴冠だった。当面の目標はIBF正規王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との団体内統一戦。しかし、岩佐はその先も見据える。モンスター・井上との対戦だ。
「井上君が将来階級を上げるかもしれないという話が出た時に、そこで俺はチャンピオンでいないと戦う権利なんてない。僕は井上君の4階級制覇のメリットになるためにチャンピオンでいないといけない。僕はハイリスクハイリターンで。あとは面白い試合。世界に注目される試合をしたい」
世界最速タイとなる12戦目で3階級制覇を達成した田中恒成(畑中)は、今年中の4階級制覇を見据えている。プロキャリアを猛スピードで駆け上がる24歳。1月にフライ級王座を返上し、井岡らのスーパーフライ級王座を奪うことを目指している。「スーパーフライ級は長い時間やりたいなと思っています。新しい体作りをするつもりはない。(課題は)技術的なことが一番」。井岡に続く日本人2人目の4階級制覇。ベスト階級となれば、タレント豊富なスーパーフライ級のベルトを統べる可能性だって十分にある。
現役日本人世界王者で最多防衛数を誇る寺地拳四朗(BMB)。12月に7度目の防衛を果たしたWBCライトフライ級王者のターゲットは、具志堅用高氏の持つ日本記録V13だ。「とにかく防衛していきたい。防衛を記録する人になります」と天然系のコメント。「統一戦も入ってきてほしい。ベルトを増やして、防衛数も増やしていきたい」。年間3試合ペースなら来年中に具志堅氏に並ぶ大記録となる。
WBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人(ワタナベ)は、一番戦いたい相手に「拳四朗選手ですよ」と真っ先に名前を挙げた。ファンの待ち望む日本人世界王者同士の統一戦。「志を高く、大きく持ってしっかりトレーニングすることはもちろん。上を見て、上を見て、活躍しているチャンピオンは上を見て戦っている。今年は統一戦でしっかり結果を出したい」。寺地も「それが決まれば僕は勝つだけ。盛り上がるならやりたい」と歓迎している。