村田諒太「普通の王者では許されない」 108秒の“代打スピーチ”に込めた王者の責任
ボクシングの2019年度年間表彰式が7日、都内で行われ、WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)が殊勲賞とKO賞の2冠に輝いた。WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)が2年連続3度目の最優秀選手賞(MVP)と最高試合賞を受賞。毎年、MVPの選手が代表して謝辞を述べるが、井上が発熱による体調不良で欠席し、村田が務めることになった。急遽任された“代打スピーチ”。壇上で耳にした他の日本人世界王者たちは何を思い、2020年を戦い抜くのだろうか。日本ボクシング界を背負う男たちの言葉を紐解く。
村田諒太が急遽スピーチ「上を行かなければ」、世界王者たちは何を目指しているのか
ボクシングの2019年度年間表彰式が7日、都内で行われ、WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)が殊勲賞とKO賞の2冠に輝いた。WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)が2年連続3度目の最優秀選手賞(MVP)と最高試合賞を受賞。毎年、MVPの選手が代表して謝辞を述べるが、井上が発熱による体調不良で欠席し、村田が務めることになった。急遽任された“代打スピーチ”。壇上で耳にした他の日本人世界王者たちは何を思い、2020年を戦い抜くのだろうか。日本ボクシング界を背負う男たちの言葉を紐解く。
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緩急のついたスピーチだった。三賞とされるMVP、技能賞、殊勲賞のうち、井上と技能賞のWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(Reason大貴)が欠席。殊勲賞の村田が謝辞を任された。関係者、報道陣など数百人が見守る厳かな雰囲気の会場。ミドル級世界王者がマイクを握った。
「本日はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。先ほど控室で『尚弥も一翔もおらんから、お前やってくれ』と。スピーチしてくれと言われまして、あとでLINEで尚弥と一翔に文句を言おうと思います」
会場が笑い声に包まれる。村田もニヤリと口角を上げた。しかし、一気に表情を引き締めると、ボクシング界の現状を包み隠さず語った。
「こうやって表彰されたメンバーを見ても、もはや普通の世界チャンピオンであることが許される時代ではないと感じています。海外奪取した岩佐選手、複数階級制覇の田中恒成選手、拳四朗選手もこれから13回防衛、そしてスーパー王者の京口選手。もう世界チャンピオンが多く出てしまって、我々も世界チャンピオンでありながら、その上を行かなければ世間が盛り上がってくれない現状を目の当たりにしている。我々、世界チャンピオンは今日表彰いただいた中で、気を引き締めてさらに上を目指して、世間を、日本中を元気にするような試合を提供していきたいと思っております」
和やかな空気が引き締まる。自身の後ろで椅子に座った現役世界王者たちの方を振り返り、一人ひとりの肩書を紹介しながら言葉を並べた。現在のボクシング界は4つの団体が存在し、一つの階級で世界王者が何人も存在する。誰が一番強いのかわからないという意見が出始めて久しい。世界王者の“その上”を目指す必要があることを改めて願った。さらに2012年ロンドン五輪金メダリストとして、東京五輪イヤーを迎えたアマチュアの後輩にもエールを送った。
「そして、オリンピックもあります。(アマチュアとして表彰を受けた)岡沢選手と並木選手。東京五輪でメダルを獲ればプロ以上の注目が集まる。そういった意味でボクシング界にとって大きな一年になる。ファンの皆さんの応援とご指導、ご支援をお願いしまして、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました」
ボクシング界の発展を願った1分48秒のスピーチ。大きな拍手に包まれる中、村田は頭を下げた。